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シリウスとボー

 やっと大枠だが緑化計画と街の再建図が決まり、各国の承認も出た。


 人員の配備やスケジュールも決まり、これでやっと本格的に作業を始めれる。


 捕虜の魔道士達も一応に深く反省しており、微罪や末端の者から随時釈放すると自ら進んで作業に勤しむようになった。




 忙しさに変わりは無いが、皆なにかしら気は楽になっていた……作業の合間に音楽や踊りの練習をしたり夕食には、ポンが良く冷えたエールを用意しておいてくれる。


 日毎に街中に緑や水場が出来る……はっきり目に見える形での達成感と共通の目的に思いの外、楽しく作業をしている。




 そんな和やかな空気の中だというのに、どうした理由かポンとシリウスは何やら胸騒ぎがして落ちつかなかった……度々、手を止めては辺りを見回している。


 今日は池の仕上げをしているのだが、なかなか捗らないようだった。


「……さっきから…いったい、どうしたんじゃ?」


「何か気になる事でも?」一緒に作業しているメーアも心配そうだ。


「……わかんないけど、何か………」ポンは不安そうに辺りを伺う。


 シリウスは神経質そうにヒゲを震わせていたが、ハッと顔を上げる、と「……何か…来る!」




 その瞬間、何処からともなく飛び込んで来た黒い塊にシリウスは地面に押し倒されていた……




「……えっ⁉ ボー兄さん⁉」


「……シリウスだ!……本当にシリウスだ〜」


 ケットシーのボーは、ぎゅうっとシリウスを掴んだまま大泣きし始めた……


 シリウスもボーを、きつく抱きしめると泣き出した。


 他のケットシー達も集まって来ると二匹を囲んで、もらい泣きするものまで居る。


 その様子にポン達は戸惑いながらも、ただ見守っている他なかった。




「……ボー兄さんも……ずっと、シリウスを探してくれてたんだけど……」ルーチェちゃんがポロポロ泣きながら話してくれた。


「……長老は…秘密任務としか、教えてくれなかったけど、この一年どこに居たの?」ミルトも鼻を啜り上げている。


「…リ、リトス姫の…護衛……」ボーは嗚咽の合間に、やっと答えた。


 皆その言葉で合点がいった……フォートリュスの王が姫を独りにするわけがない。


 そして最も適任なのはボーだった……郷で一番の魔法の使い手であり育てたもの達の協力もある。


 それでは、長老も話せないわけだ……




 シリウスが転移して戻って来たと聞き、直ぐにでも会いたかったが、リトス姫の側を離れられる状況では無かった。


 シリウスも何度も長老に聞いたが、秘密任務で戻れないと言われるばかりで忙しさのうちに今に至っていたのだ。


 ボーは和平条約が結ばれると、そのまま此方に向かったのだという。


 シリウスとボーを見つめながら、ポンももらい泣きしだした……会いたいの我慢して任務にあたってたなんて……




 やっと落着いてくると「……僕の代わりにラークとデューが残ってくれてね…」


「どうして長老は、ここに向かっているって教えてくれなかったんだろう? ひどいや!」


「…僕が黙っていてって、お願いしたの……僕がどんなに心配してたか知らないだろう? 驚かそうと思って色々と考えてたんだけど……顔を見たら全部忘れちゃった………」


 その時、小鳥と大鴉が近くの岩に舞い降りて来た……よく見ると大鴉の背中にはリスが乗っている。


「……うん、落ち着いたよ」ボーが大鴉に頷く。




「うちの小鳥のことちゃんとリスのリっちゃんだよ〜」ある意味わかりやすい名前の付け方だ(笑)


「それから大鴉のカー君だよ~」


「……カー君?(オーちゃんじゃないのか)……」見るからに大鴉は嫌そうな顔をしている。


「兄さん、相変わらずの名前の付け方だね~」


「……なんで? 可愛いでしょう?」


「本鳥は可愛いじゃなくて格好いいって言って欲しいみたいだよ?」


 ボーはキョトンとすると大鴉を見つめ「……やっぱり可愛いじゃない〜」と笑っている。


 思わず、ポンも頷くと凄く気が合いそうなケットシーだと思った。




「シリウスを探しに魔族領の近くまで行った時に雛だった、あの仔を魔獣が咥えて通りかかったんだけど……僕の方が食べるところが多いと思って襲って来たんだよ~欲を出さなければ、やられなかったのにね~」


 大鴉というのは魔獣に属していて二年程で成体になるそうで、大人だとケットシーを楽々と乗せれるくらい大きくなるそうだ。


「……じゃあ、カー君は里帰りですね」思わず声が出てしまい慌てて自分の口を押さえた……邪魔しないようにと思ってたのに、この口が〜




「……兄さん紹介するね、僕のパートナーのポンちゃんだよ〜」笑いながらシリウスは私に手招きした。


「ボー兄さんは僕の魔法の先生で〜とっても大好きな兄さんだよ~」


 私は姿勢を正してボーの前に正座すると手を付いて深々と頭を下げた「ポンです……不束者ですが宜しく御願いします〜」


「おお〜! 噂の異世界勇者様ですね……シリウスが世話になったそうで、こちらこそ宜しくお願いしますね~」


「……あっ、ポンと呼びすてで御願いします」


「……ふふ、ポン()()()も可愛いね~」


 そんな事、異世界に来てから初めて言われたかも……嬉しい(ポッ)




「シリウス、歓迎の準備を休憩室に用意するから、ボー兄さんとゆっくり来てね」


「……カー君には御手伝いを御願いできますか?」


 カー君が『いいよ~』と一鳴きしてくれたので一緒にケットシー休憩室に向かった。




「カー君、アシエール国から急いで来たんなら……水浴びが先か御飯が先か、どちらがいいですか?」


 カー君は黒耀石の様な目を輝かせ一鳴きする。


「水浴びですか? 綺麗好きなんですね〜」


 休憩室の横に大きめの子供用プール位のサイズの、たらいを出してやると、さっそく水飛沫を上げながら羽根を広げはじめたので、水浴びの間にアイテムボックスから枯木を出し(もはや常備品ですよ)入口と窓の間位の地面に突き刺すと変性させて大きな止まり木にする。


「カー君〜この大きさで大丈夫そうです?」


 カー君が水から出て来るとピョンピョン飛び跳ねながら側に来て小首を傾げて、さっと止まり木に飛び乗った。


 良いそうなので、止まり木の周りにテーブルのような台を出し御飯皿を用意する。


 一つには雑穀を入れ、もう一つには木の実を入れる。


「後、食べたいものは?」


 異世界に来て何が一番、良かったかというと、こうして直接意思の確認が出来る事なんだよね~


「果実と……お肉、ですか…」まあ、烏も雑食だしね……大鴉なら当然か。


 リンゴとオレンジを出しているところへ、シリウスとボーを先頭にケットシー達がやって来た。


「ちょうど良いところへ……ボー兄さん、カー君の御飯用のお肉ってどんな物を出したらいいですかね?」


「………これは、また良く出来てるね~細切れでいいんだけど……カー君、甘え過ぎだよ?」


「僕、食堂でもらって来るよ!」カイルが直ぐに走って行ってくれる。


 カー君は、そっぽを向いてオレンジを突き出し、リスのリっちゃんはボーの肩から降りて木の実を頬張り小鳥のことちゃんは雑穀を啄み始めた。


 私は休憩室のテーブルに御飯やキスルンルンを出していく……今日はケットシーの宴会だ〜







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