新たな、ケットシー
私が微笑むと、シリウスも安心したのかシッポを振ってゴロゴロいう。
ふと見るとシリウスのシッポが…何か……あれ?
私はシリウスの後ろにまわって背中を撫で下ろしていく……と、尻尾のつけ根辺りをまさぐった、元々凄く長毛だったけど……
「なんてこったい…」
「え? 何? 何? 怖い!」シリウスも後ろを見ようと身体をひねっているが…見えないのね。
私はシリウスの両手に、それぞれ一本ずつシッポを持たせてやった。
やっぱり猫又なんじゃ?
「ねえ…ケットシーと猫又の違いって?」
「ボ、僕のシッポが〜なんで〜?」今度はシリウスが泣きだした。
猫は涙って出ないけどね、ケットシーは号泣できるのね。
「さっき、ここは魔力がいっぱいって言ってたじゃない? きっと、そのせいだよ?あふれちゃったのかも」
まだシリウスは後ろを気にしながら二本のシッポを引っ張たりしている。
「ねえ~カッコ悪くない?大丈夫かな?」気になるの、そこ?……まあ、これから里帰りだしね。
私は立ち上がると、川辺りに行って顔を洗うと、今更だけど服の土を払う。
シリウスが、魔法でペットボトルに水を入れてくれる。さて出発しますか。
「シリウスって、そんな声だったんだね…今まで、あまり鳴かない猫だって思ってたから、何か新鮮だわ」シリウスは照れくさそうにしている。
「なんか毛もふんわり艶々だし、身体も大きくなった? 後ろ足で歩いてるせいだけじゃないよね?」
元々ノルウェージャンフォレストキャットか、メイクーンの血でも入ってるのかなって位の長毛の大型猫だった、痩せてるけど骨格が大きいタイプ。
シリウスは、あらためて身体を見回している。
上流に向かって歩いて行く。
空気がキレイで、花々の良い香りが風に運ばれてくるし、なんか長閑だよね。
じきに森の中に入って行った。鳥達や虫達の声、風が木々の間を抜けていく音と森の中は命の気配でいっぱいだった。
しばらく歩くと、まるで太古の森のような、樹齢何百年って感じの木々にかわっていった。
まるで、この森に人が入るのは初めてみたいに生い茂っている。
足元がどんどん苔生していって一面、緑また緑になっていく。
だんだん、ハーブとか樹脂みたいな香りの方が強くなってきて、私は思わず胸一杯に深呼吸した。
シリウスと生活してからは旅行に行けなかったぶん、なんだかウキウキしてくる。
そうして、さらに歩いて行くと、少し前方の大木の根元に何かが立って居るー
私が慌てて立ち止まると、シリウスが振り向いて、そっと囁やいた。
「多分、大丈夫だよ」
「知ってるの?」
「なんか見覚えがあるんだよね~」私達は、ゆっくり近づいて行った。
木に片手をつき、もう片方は腰にあてて、まるでグラビアのモデルのように格好をつけて、二本足で立っている大きなトラ猫だった。
右目の下に、キズがあって強面に見えるけど、雰囲気は以外と優しそうなんだよね。
まるで今、気がつきましたって感じで、二度見してきたけどね、さっきから視線がチラチラしてるのに気がついてたし。
「見た事あると思ったら、やっぱり兄さんだね~」
シリウスは手を振りながら近付いていたけど急に一歩、後退ったかと思うと木の上から、もう一匹飛び降りて来て、トラ猫に蹴りを入れた格好になる。
「もう!避けたわね」そこには、小さくてスラリとした見るからに可愛い猫が立っていた。
シリウスと同じ、ハチワレ柄なんだけどクリーム色と白で目の際から赤い縞模様が入っていて、アイラインのようにも見える美人さんだ。
シッポだけ毛が長いのも、あでやかな猫さんだ。
「ルーチェ、会いたかったよ!」
トラ猫が這いつくばってるのも気にしないで、シリウスににじり寄り叩こうとするけど、シリウスがかわしてしまうので、すっかり癇癪を起こしかけてる。
「なんで避けるの? 叩かせなさいよ!」
「痛いのイヤだもん」シリウスの言いぐさにルーチェという猫は頭から湯気が出そうで……うわッ…………泣いてるの⁉
「何で俺が蹴られなきゃならないんだよ~」
「シリウスが悪いのよ!」
トラ猫はため息をつきながら、小さな声で「理不尽」と呟いてる。
シリウスは私を振り返ると「妹のルーチェと、お目付け役のミルト兄さんだよ」「この人は僕の…」と、言って少し考えると「パートナーみたいな感じかな」
そう言って私にウインクしてきた。ワオ! 確かに普通の猫じゃないかも…
「ずっと行方知れずで何年も探してて、やっと帰って来たと思ったら、人間のパートナーですって?」シリウスの毛に掴みかかるとグイグイ引っ張っりだした。
「今まで、どこに居たのよ!」
「君は相変わらずだな~すごく帰って来たって実感するよ、話せば長くなるんだけどねぇ」シリウスはルーチェの目を覗き込んだ。
「異世界に飛ばされてたんだよ」ルーチェは、とたんに全身の毛を逆立てると、ミルトの横に飛び退いた。
二匹は何やらヒソヒソと話していたが、何か思い出したのかルーチェが肉球を合せて「あれって、お伽話なんじゃないの?」
ミルトは首を振りながら「でも、あれだけ探して見つからなかった訳だし…さっきのも…えっ?!……シッポが…」
二匹は、もの凄い勢いで考えているのか、ヒゲをピクピク震わせている。
「とにかく皆んなの処に行こう、ゆっくり話を聞かなきゃ」
ミルトが、まだブツブツ言っているルーチェの背中を押しながら、シリウスに手招きをして、私の方を見る。
「どうぞ、あなたもいらして下さい」と丁寧にお辞儀をしてきた。
シリウスは私に手を差し出すと私は頷いて、シリウスの手を握った。