ケットシー休憩室
行ってみると、食堂と同じような造りの二階建ての建物だった。
さっそく真ん中にある扉から中に入ると備蓄用にでも使われていたのか数個、からの木箱があるだけで、扉の無い部屋が三部屋連なっている型だった……真中の部屋に二階への階段があった。
まず風魔法で床材の上を一掃してから木箱を外に出してしまう……帰る道中で、おおよその案は考えていたのだ。
部屋どうしをつなぐ扉の無くなった間口を壁ぎりぎりまで広げる、建物の耐久性が心配だったので一部を残した。
私は壁に手をあてると目を閉じ、しっかり頭の中にイメージを描き出したところで魔力を込めた……背後でシリウスと古竜お爺ちゃんが「おお~っ!」と言っているのが聞こえて、そっと目を開けた。
一部屋、全ての壁にケットシーの郷の森を写し出し(写真プリントみたいな感じかな)天井には空を写した……なんとか思い描いた感じになりましたね~
次はアイテムボックスから枯木を二本、出すと隣りの部屋への入口の両脇に一本づつ差し込むと、それぞれに手をあて、もう一度目を閉じて集中すると掌から枯木が動いていく振動が伝わってくる……枯木が壁を這い天井にまで届いている、もう少し必要かなと思い、四隅にも枯木を差し込みバランスを見ながら変性させていくと壁のプリントと相まって森っぽさが出て来た。
その都度シリウスが「あそこの枝をもっと太くして〜」とか「そこも乗れるようにしてね~」とか指示出ししてくれるので調整していく……使うのはケットシー達だからね。
アイテムボックスから布を出し床に置くと手をあて目を閉じる……柔らかい芝生のような草色の絨毯が部屋いっぱいに広がっていく……
部屋の中央にアイテムボックスから出した水草入りの水桶を出し木製を石に変えて水瓶にして、さらに大きくする……直径が二メートル位で高さは七十センチ位かな、それを囲むように曲線を付けた長めのベンチを五台、木から変性させて置く。
ベンチの高さは三十センチ位にしてみたけど……シリウスに座ってもらい水瓶に肘がつく高さに微調整する。
扉の無い面に倒木を置いてと……おおまかな配置だけして階段のある方の部屋に移動する。
こちらも壁と天井を同じ様にして枯木を張り巡らしておく。
それから階段の下を丸くえぐり二匹が入れる位の空間にしてみる……ケットシー用ラブベンチシートみたいな? こういう場所を、もう少し増やさないとだね……
もう一つの部屋は木の洞のイメージで枯木が三つの部屋を縦横に這う事で一体感を持たせてみましたよ……こちらの部屋には絨毯と、その上により濃い緑色のマットレスを敷き、クッションを幾つも出す。
「どうかな?」
「わしも……ああいうのがよいな~」お爺ちゃんが階段下を、尻尾で指し示してくる……洞窟っぽいのってことかな?
クッションとマットレスをアイテムボックスにしまっていると、入口付近から斥候のエルさんが恐るおそる顔を覗かせた。
「……ポン殿〜様子を見にまいりました」
私は、ずっと集中していて気がついてなかったんだけど、魔力を放出するたびに稲妻のような光が出ていたらしく、外から見ると建物の中で雷が起こっているようだったとか……窓から覗き込む兵達の姿が見えた。
あら、まぁ……
「集中していて気づきませんでしたよ……それより、あちらの壁を少し外に拡張したいので見てる人達に離れるように伝えてもらえますか?」私は建物の外側に半円状に壁を拡張すると、木の洞のようにして古竜お爺ちゃんに入ってもらう。
「お爺ちゃん、もっと広げる?」
お爺ちゃんは身体を前後左右に動かすと「もう少し頼むぞ~」というので広げてみる……たまに、こういう場所にも入りたいのだそうだ。
それを見ていたシリウスが「窓に座れるの……何て言ったかな~え~っと……」
「……出窓?」
「それそれ〜!」
「エルさ〜ん! 今度は窓側を、お願いします〜」
エルさんにも手伝ってもらいながら出窓分を外側に拡張して、木の洞風にする。
枯木の枝を垂らしたり這わせて調節して、あいてる場所にマットレスとクッションを、もう一度出す。二階は、どうしようかな………そこで私は、そのまま寝落ちしたのだった。
耳元で話し声がする…………目を覚ますと、私はケットシー休憩室のマットレスの上で寝ていた。
片足は横に寝ている古竜お爺ちゃんの上に乗っていて、片手はシリウスを抱きしめている……そして私を覗き込む見知らぬエルフの顔があった。
「ウワッ~びっくりした~!」
「やっと起きられましたな……」




