そこは猫と同じという事で…
池の見守りはケットシー達に任せて、応急処置で水鉢を建物の出入口や室内に置いていく。
念のため兵の方に槍を一本もらい、下から三十センチ位あけて手の幅で刻みめと数字を刻み窪みに下の線まで土に挿しておく。
「お爺ちゃん、この水源の川か湖に行けます?」
「フムッ………そんなに遠くはないの……わしなら、すぐじゃ〜」
「では、アイテムボックスをお持ちの方々……御同行をお願いできますか?」
ニクスさんとメーアさんと他に三人のエルフ達が前に出て来てくれたので、さっそく古竜お爺ちゃんに乗って出発したのだった。
「先ずは盛土が流れないように岩で囲いましょうか?」
「たしかに雨の少ない地ではありますが……念のためですね」
「では手始めに岩を運ぶのですね?」
さっそく古竜お爺ちゃんに乗せてもらって出発する。
お爺ちゃん的には、これでもゆっくり飛行しているそうなんだけど……あっと言う間に川の上空についてしまった……徒歩だと、どの位の距離なんだろう?
川幅は広いが、ゆるやかな流れで近くに森もありキャンプなんかも出来そうだ。
着地すると、皆アイテムボックスに岩や石を詰めていく。
私とシリウスのアイテムボックスは実は、まだ容量がわからないのだ……川に向かう前に念のため全部、出してきたけど今まで一杯になった気がしたことがないんだよね……
多分、容量は多そうなので率先して大きな岩を入れているけど、人間の世界なら重機がないと動かす事も出来ないような岩も魔法があれば簡単に動かせるのだ。
シリウスが岩を拾いつつも森に近付いていくと、手を振って来た。
「ここの倒れてる木も持って帰っていい?」
「木? どうするの?」
「あそこ、爪をとげる木とかないんだもん! みんなよろこぶよ~」
私はその瞬間、浮かせていた岩を落としシリウスを見つめた……岩は自重で半分近く地面にめり込んでしまったが、私の意識は枯木に向けられたまま口を開けるけど、すぐに言葉が出てこない。
「…………爪とぎ⁉」
「…ごめん‼ 御飯の事だけで思いもつかなかったわ……」
ふと見ると、倒木で爪とぎしているアピスちゃんが目に入った、ピクシードラゴンもか……
ここに来てから皆どうしてたんだろう……やっぱり家具とか柱あたりを…ゴクンッ
私は倒木を探しに森の中に駆け込んで行った、とりあえず一匹に一本は要るよね……
あとは布を大きな袋に変性させて砂も詰め込んでいく、砂を水で泥状にして岩と岩の隙間に詰めて崩れないようにするのだ……DIYの番組とか見てて良かったわ、雑学も無駄にはならないのね。
川辺りの水草を水ごとすくい変性させたタライに入れた物を幾つも、アイテムボックスにしまうと急いで戻る事にした。
戻ると皆には池のほとりに岩の大きさ別に分けて置いてもらうように頼み、私は隊長さんを探しに走って行った。
「今、戻りました~シリウスに言われるまで気がつかなかったんですが、ケットシー達にも爪とぎが必要だったそうです……それで考えたんですが、ケットシー用の休憩室のようなものを作るのはどうでしょう?」
隊長さんは、しばらく考えていたがハッとしたように顔を上げた。
「…そこは猫と同じという事ですか……」
「……そういえば、アピス殿も壁で爪を研いでいるのを見かけたような…………」
副官のカナルさんがポツリともらす……見た時に言ってくれたらよかったのに。
「それでは………食堂に向かって右隣の建物の検分が終わり無人ですので、そこをケットシー用にお使いください」
「あと造園とか施工とか釣りの出来る方って居ますかね?」
「村人達と民兵にあたってみます………彼等には、なるべく早く帰してやりたいと思っているのですが、もうしばらく協力していただかねばなりません」どうやら、エルフ族の承認も必要らしく隊長さんの一存では決められない事らしい。
アシエール国と魔法国の件は人族とエルフ族に獣人族、ケットシーの連合軍が鎮圧したという型に落し込むために獣人族の方々(実は兵ではなく商会の方々)にも同行してもらったのだそうだ。
私には政治的な事はわからないけど、隊長さんが寝る間もない状態なのはわかる……私だけしっかり寝てて、ごめんなさいね。
私は先にアイテムボックスの岩と砂を出してから、食堂の右隣の建物に向かった。




