水源を探して散策
「では庭園の件、よろしくお願いします……あと…露天風呂も」
隊長さんは会釈すると、また執務のために食堂を出て行った。
露天風呂……気にいってたんですね(笑)
必要な人員が揃うまでは休むに休めないだろうしね……
「そういえば、ここら辺には魔獣が出ると言ってましたよね?」
「確かに生息域ですが……古竜様の気配だけで近づきはしないでしょうし、ここまで荒廃していては来たくとも来れないのではないかと思いますね……」
それなら設置場所とか、あまり気にしないでよさそうかな……
そこへメーアさんがケットシー達を従えてやって来た。ケットシー·エスコート·サービスだね(笑)やっぱりケットシー達はポシェットを身につけてる……
「これはよいところへ……人口庭園を造ろうかと思っているのですが、ご相談してもよいですか?」
「まあ! 庭園を……有難いですわ………ケットシー達が居なければ私には耐えられなかったと思います………何もかもが…砂とレンガだけなんですもの」思っていた以上に辛かったみたい。
「やっぱり? 僕も毛までバサバサになっちゃたよ〜」
「私も〜」ケットシー達はせっせと身繕いしている。
今日の、お弁当用に鶏の照焼きと白身魚のフライにマカロニサラダ、卵焼きに、ほうれん草のソテーを出してからシリウスの空っぽのポシェットを見る………それじゃあ、キスルンルン飴を出しますか……と思った途端にケットシー達が一斉に集まって来た………感が凄すぎるよ。
私は食事中の方々の邪魔にならないように慌てて外に飛び出した……私が食べ終わるのを待ってたのかね……
皆に配り終えると、お爺ちゃん用のポシェットも出し首にかけてみる……
「この位置で大丈夫? 苦しくない?」
「よい、よい。大丈夫じゃ……今日もすまんの〜」
一番の仕事を終えた事だし、先に水源がないか確認しとこう。
「わし、水源を見つけるのは得意じゃぞ!」
「本当に? 水源がどこら辺にあるかわかるの? さすが、お爺ちゃん〜」
長い眠りの後は、先ずは水を探すそうで、これは全ての生き物に共通だよね。
そのまま皆で水源を探しに歩き出した。
水源探索というより、古竜お爺ちゃんの後を沢山のケットシー達と私とニクスさんとメーアさんがついて歩く様は、まるで幼稚園児の集団散歩のようだった……
引率は私とニクスさんとメーアさんで、アピスちゃんもルーチェちゃんと並んでお喋りしているのが可愛い。
通りかかる兵達が口をあんぐりと開けて立ち止まっていく……今日もお騒がせしてます、ぺこり。
しばらく行くと古竜お爺ちゃんが「こっちじゃな……」と言うのでついて行く。
お爺ちゃんが時々においをかいでは歩いて行くのに、私達がついて行くと宿泊にあてている建物の裏手の空地あたりに出たようだった。
建物の横に少し灌木が生えているだけで、なんとも寂れた場所だ。
お爺ちゃんは地面のにおいを嗅いでいたかと思ったら、いきなり元の大きさに戻ると後ろ脚で土を掘り出した。
その姿は、まるで海岸で砂を掘り返す犬のようなんだけど……
ショベルカーより、はるかに大きな体が乾いた地面を簡単に深く抉っていくと、あっという間に後ろに土が山のように盛り上がっていく……
お爺ちゃんの下には大きな窪みが出来ていた。
「こんなものかの~」と言うや、後ろ脚で立ち上がったかと思うと前脚を『ダンッ‼』と窪みに打ち下ろしグッと魔力を込めると、ゆっくり馬サイズに戻り私達の横に戻って来た。
声もなく私達は、じっと窪みを覗き込んだ。
じきに土の色が濃くなったかと思うと、始めはジワジワと水が滲み出すようだった……が、こんこんと湧き出して来ると思わず後退っては、また呆然と見つめる。
「お爺ちゃん……凄すぎる…」
「……さすが古竜様……………」
「…………」
しばらく私達は放心したまま動く事も出来なかった。
いつの間にやら後ろには兵達や他のエルフ達まで集まっていた……
「これ……どこか別の場所が干上がったりしてません?」
「ちょいと深い所にあったがの〜本流は大きかったから大丈夫じゃろう」
そう聞いても内心はドキドキものだった…本当に大丈夫かな……
「お爺ちゃん、凄いね~」
「ウワッ〜スゴイ〜」
「……お水と一緒に、お魚も出てくる?」
誰かの一言に、その後ケットシー達は『お魚は?』て、口々に言い出して苦笑いしてしまう。
水が溜まるまで時間がかかりそうだね……ちゃんと止まるよね?
「お魚、楽しみだよね~」
「どんな魚だろうね~?」
いつの間にやらケットシー達は池ではなくて、お魚を目当てに待っているのだった……
じっと待つのは猫科の専売特許だよね~って……生きた魚は何処で調達すれば⁉




