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ケットシーの標準装備

 私は夢を見ていた……夢を見ている自覚はあるのに起きれなくて、もがいている……そんな夢。


「……カハッ!」私はやっとの事で目を覚ました……


 もしや、これが金縛りというものか?


 私は見知らぬ部屋のベッドの上で大の字で寝ていた……なんか動けん…………



 少し頭を上げて右側を見ると肩の近くにシリウスの頭が見えた……左側にはルーチェちゃんとミルトの頭が乗ってる……


 そりゃあ動けないわ……ちょっとワクワクしたのに。


 今日もベッドの横には古竜お爺ちゃんも寝ている……すっかり定位置だね。


 よく見るとベッドの上には私の体を枕にしてミミねーさんやカイルとココちゃんにレオン達まで一緒に寝ている……うん、動けるわけがないよね……体が痺れてないのが不思議な位で、状態異常耐性ありがとう!


 すぐにシリウス達も目を覚まし開口一番「お腹減った~」て言うので、シリウスに食堂まで案内してもらう。




 みな昨日、出したキスルンルン飴用のポシェットを肩にかけていく……もう空っぽのように見えるね……


「わしも、ああいう容れ物がよいのじゃがな~」


「じゃあ……食事の後でね」もしかして……標準装備になってしまった?



「誰がベッドに運んでくれたの?」


「隊長さんだよ~君が食堂の椅子の上で寝ちゃってて驚いてたから、どこでも寝れるんだよねって言っといた~」それフォローになってないからね……恥ずかしいなぁ、もう。



 食堂に入ると隊長さんが居た…気まずい時ほど、会っちゃうものだよね……


「運んでくださったそうで……ありがとうございます…………」


 見ると隊長さんの目の下にはクマが出来ていて、書類に目をとおしているところだった。


「……少しは…休まれましたか?」


「三十分程、仮眠しましたので大丈夫です……そろそろ起きられる頃だと思いまして」


「……少し待っててください」私は急いで食事を取りに行った。うちの腹ペコ達には人間の都合は関係ないからね。


 ケットシー達は食堂のベンチの上に座ると身繕いしながら待っている……


 厨房には隊の炊事班も入って忙しそうだった。


 私は、宿の女将さん達が作ってくれたスープとパンと水と空の食器を持って戻ると、いつの間にやらニクスさんとアピスちゃんも来て隊長さんの隣に座って居た。


 アピスちゃんの肩には、やっぱりポシェットが(笑)



 おばさんの作ってくれるスープは、お味噌汁のように毎日飲んでも飽きない優しい味なんだよね……


 今日は玉子サンドとBLTサンドにフライドポテト、オーソドックスな熱々のアップルパイにバニラアイス添えを出し隊長さんにもすすめる。


「……あの『弁当』というのは助かりました。当初、頑なだった魔道士達も『弁当』を食べた途端、落ち着きまして……今ではきちんと受け答えもするようになりました……中には泣きながら食べている者も…」


 空腹は凶暴化のもとだよね(笑)


「どうやらアシエール軍もそうですが、魔道士達も日毎に脱走して逃げ出していたようで……残ったのは逃げそびれた者達だったようです」


「だから、あんなに簡単に制圧出来たんですね?じゃあ……親玉は? 逃げたんですか?」


「いえ、古竜様が……倒したのが首領だったようです」私はホッと息を吐いた、一番に逃げ出すタイプじゃなくて良かった……


「明日あたりにはエルフ族の魔道士達も到着するかと思いますが、それまでは魔術に関する事は聞けないので……申し訳ないのですがケットシーの皆様には、もうしばらくお付き合いいただかねばなりません……」


「ミミねーさんは尋問にも同席しないとですもんね……」ミミねーさんを見ると御飯を食べながらも、何度も身繕いしている……


「どうしたの? 何か付いた?」


 他のケットシー達も、いつもより身繕いしているような……


 ルーチェちゃんがミルトに、もたれた途端『バチッ』と音をたてて小さな火花のようなものが見えた。

 その瞬間、二匹とも飛び上がって離れ、その様子に他のケットシー達も飛び上がる。


「何……今の?」


「痛〜い⁉ なにするのよ~」


「僕じゃないよ~」


「ア~びっくりしたでしょう?……たぶん、それは静電気と言って空気が乾燥していると起こりやすいんですよね……」


 空気が乾燥しているから皆やたらと身繕いしていたのか……状態異常耐性があると環境の変化がわかりにくいのか……もっと気をつけてあげなきゃ……


 隊長さんは片眉を上げ怪訝そうな表情になった。


「…静電気ですか?初めて聞きます……」


「ここに来てから変なんだよね……」


「チクチクする感じ?」


「……パサパサ?」


「皆、普段は緑と水が豊かな所で暮らしているから……こういうのは初めてかもしれないですね……もしかすると、ここの環境でも平気なのは私とシリウスと古竜お爺ちゃん位かも……」


「そんな〜! もう帰ろうか?」


「ミミねーさんは、どうする?一緒に帰ろうよ」


 それを聞いて隊長さんが慌てて、ミミねーさんを見つめて「いえ、ミミ殿には居ていただかないと。帰らないでください!」


 ミミねーさんのシッポが少し逆立っている……「でもね~」


 それまで考えこんでいたシリウスが「ねぇ……池とか花壇を作ってみたら?」


「緑化か………人口庭園とかで、どの位緩和できるかな?」


「人口庭園とは?」


「私の居た所では緑化のために花壇や池を建物のてっぺんに造ったりしてたんですけど……ここなら空地はいっぱい、あるんですよね……」


「おお! それは素晴らしいですよ、ここは少々息苦しく感じていたのです」ニクスさんはアップルパイのおかわりをしながら何度も頷いている……やっぱり?


「応急処置で水鉢を置いて……後は生態系に影響が出てもいけないでしょうし……アシエール国から植物を運んで来て鉢植えで育てれば土の問題も大丈夫でしょうし……池だけでなく、またシリウスに露天風呂でも作ってもらいましょうか?」


 露天風呂と聞いて隊長さんの顔色が少し良くなったみたい。



「人口庭園……ちょっと面白そうだよね~」シリウスがやる気満々みたいで………不安だわ…大事にならないといいんだけど。







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