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キスルンルンしか勝たん

「ペッして! お爺ちゃん、ペッ! お腹壊しちゃう」


 古竜お爺ちゃんの口の中には、まだ大量の塵があり鼻の穴を引くつかせていたが我慢しきれずに思わず大きな、くしゃみが飛び出した。



 あれは粉薬や、きな粉餅を食べてた時にやらかした事がある……ちょっとした惨事だったわ……



 古竜お爺ちゃんの場合は大惨事で、くしゃみと同時に目の前の壁も吹き飛び瓦礫と粉塵が舞う……天井が無くて良かった~



「ウップ! なんたる味じゃ〜口直しじゃ〜早う、かき氷を頼む〜」



 シリウスがお爺ちゃんに走り寄りながらアイテムボックスから、お爺ちゃん用の器を出すと氷魔法と風魔法で瞬時にフワフワのかき氷にしていく。



 すかさず私も素材を出すとシロップに変える。最初の一個目は抹茶シロップと黒蜜を出し、お爺ちゃんの前に置くと、ほとんど一口で食べてしまう。



 次は抹茶アイスと黒蜜と練乳で、口の中がスッキリしただろうところで、お爺ちゃんの好物イッキ盛り。



 バニラアイスと抹茶アイスに練乳と黒蜜ソース、あずきと白玉とあんずに桃の実のかき氷!



 お爺ちゃんイッキに三個食べて、やっと落ち着いたのか鼻の辺りを擦って猫のように顔を洗いだした。



「ふ~っ! やっと竜心地がついたぞい……」



 それから、古竜お爺ちゃんは咳払いをすると「ウームッ……まだ喉がイガイガするの〜」と言いながら私をチラチラ見てくる。



 こういう時は、のど飴かな? でもドラゴンだしねぇ…………そうだ!



 私はシリウスが水と風魔法で洗ってくれた先程の器に、キスルンルンを特大サイズのボール状に固めて鰹節パウダーでコーティングした物で満たすと、お爺ちゃんに差し出した。



「これは、飴なので噛まずにゆっくり口の中で溶かすように食べてくださいね」



 お爺ちゃんは一つ口に入れると目を見開いた……また何処からともなく雷が鳴ったし。



「なんと! キスルンルン味じゃ〜」あとは器を魔力で浮かせると一個づつ食べだした。



 それを見たシリウスとミミねーさんとアピスちゃんにカイルまでが、私に飛びかかってきたかと思うと押し倒されてしまった。



「僕にも! 僕にも〜!」



「私にも〜!」



「ぜったい美味しやつだよね⁉」



「新しいのだね?」



 オルデン王子は緊張したまま呆然と立ち尽くしていたのだが、この光景に笑いだした。



 ちょうど四匹に馬乗りされているところへ隊長さんがやって来た。後ろには農民のような服を着ているが、オルデン王子の護衛官だろう三人を従えている。



「これは……いったい何事ですか?」



「オルデン王子! よくぞ御無事で……」



「急に姿が見えなくなり…どれほど肝が冷えたことか……」



「オルデン様〜!」



 護衛官の狼狽した姿に、オルデン王子も申し訳なさそうな顔になる。



 私は、なんとか起き上がると「お…落ちついてよ~!……ちゃんと出すから…待って!……そのかわりシリウス、隊長さんに説明しててよ!」



 私がケットシーサイズのキスルンルン飴を出し、肩から斜め掛けに下げて持ち歩けるようにポシェットもセットで出す。



 アピスちゃんには羽の邪魔にならないように調節してやり、ここに居ないケットシー達の分も出して、シリウスのアイテムボックスにしまっておいてもらう。


 私のアイテムボックスだと寝落ちしたら出せないしね……



 もちろん、ココちゃんの分はカイルに預けましたよ。




 隊長さんはシリウスから話しを聞くと、ため息をついた。



「まったくあなた方は! 取り逃さなかったのは、せめてもの事ですね」



 シリウスとミミねーさん、アピスちゃんはキスルンルン飴をうっとりしながら舐めてて隊長さんの話しなんて聞いてないし、カイルはココちゃんを探しに走って行ってしまった……



「お爺ちゃんが食べちゃったのは驚いたんですが……あれは、それは気持ち悪くてですね? 触るのは躊躇う位で……正直、お爺ちゃんに感謝ですよ」



 隊長さん長〜い、ため息をつかれました……最近こればっかですね、すみません。




「残りの魔道士達は皆、捕まえました……つきましては尋問の際ミミ殿、立会をお願いします」



 ミミねーさんの特技は嘘を見破る事なんだとか、あの強烈な掌打じゃなかったのか~



 皆で階下に降りると、さっそくシリウスが他のケットシー達にキスルンルン飴入りポシェットを配っていく。ケットシー的優先順位なんだね……





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