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魔法国にて

 遮る物のない魔法国には魔族領から強い風が吹き抜けていき砂塵が舞っている……


 魔法国は上空から見ても国というより街位の広さしかなかった。


 遠目に山々が見える辺りまで緑地帯が見えず、まるで砂漠のようだったが、よく見ると地面が焼け焦げたような所や、えぐれているような所もある……


 これは魔法の実験によるものだそうで、魔法によっては何年も草さえ生えない程のダメージを受ける事もあるそうだ。


 鳥や動物どころか虫さえ生息出来ないような不毛の地となっているようだ……


 建物は赤みがかった日干しレンガ造りで密集しており、街中にも木々や花壇なども見当たらなく乾燥していて、まるで廃墟のように静まりかえっていた。




 古竜お爺ちゃんは上空にステルスモードで到着すると、空中に向けて咆哮しながら火を吹いた。あっ………やっぱり火を吹けたんだ、聞いてなかったわ。



 ニクスさんの継続魔法でステルス状態のまま私達は待機し、お爺ちゃんだけ姿を現す。


 この方がインパクトがあると思ってだったが、いきなりお爺ちゃんの身体から衝撃波のような力が射出されたような……


 その瞬間、空気中に幾つもの放電が走るのが見え、隣りに立っていた者達がよろめいているのを感じる……


「……さすが古竜様です…覇気だけで、これ程とは……」ニクスさんの少しかすれたような声の囁きが聞こえた……


 下を見ると魔道士が何人も気を失って倒れていく……兵達はなんとか踏みとどまっているようだが中には膝をつく者もいた。



 気絶せずに耐えた残りの魔道士達は集まると、一斉に空中に向かって魔法を放って来たが、あらかじめ掛けておいたシールドのお陰で、こちらでは誰も魔法にかかることはなかった。


 それでもなお魔道士達は必死の形相で魔法を飛ばしてくる……



 お爺ちゃんは魔道士達に当たらないぎりぎりで火を吹いたり風魔法で、なぎ払ったりしてタイミングをみている……まるで猫が一人遊びをしているような感じだ。


 それにしても迎撃の用意ってこれだけ?拍子抜けなんだけど……噂の魔導兵器は?もしかして未完成だったの?




 その時、早くも硝煙弾が上がった!


 私達を迎え討つため大半の魔道士達が集まり村人達の監視が手薄となっていた事と、古竜お爺ちゃんの覇気によって気絶した者が多数おり、あっさり見張りを制圧して解放出来たようだ。


 ココちゃんから全員無事と念話が入り一安心する。




 これなら、わざわざステルス状態でダイブする必要もないだろうと、一緒に乗りこんでいたケットシー達とエルフ達はシールドを纏った状態でいっきに空中に躍り出た。



 ニクスさんやメーアさん達は纏ったマントを翻しながら……ルーチェちゃん、ミルトやミミねーさん達は両手両足をめいっぱい広げて降下していく。


 それぞれ着地と同時に駆け出して行くと魔道士達を拘束しに向かったが、何か地面に仕掛けられていたのか細長い刃が何本も飛び出して来た!



 私はハッとして思わず古竜お爺ちゃんから身をのり出した……


 メーアさんが軽やかに袖を振ると刃が全て弾かれ、近くの建物の壁に突き刺さった。


 なおも踊るような優美な仕草で魔導兵器を壊していく……どうやら感知出来るようだが、戦う姿はまるで天女の舞のように優雅で美しい。


 私は安心と同時に見惚れてしまった……


 レオンがメーアさんの背後につき刃を弾いている……初めて連携するとは思えないくらい、いきがあっている。


 魔法では魔道士達よりも、こちらの方がはるかに上手なうえに体力でも力の差が有り過ぎて、簡単に魔道士達を制圧していっている。


 古竜お爺ちゃんの背からフォートリュス国軍とアシエール国軍が突入してくるのが見える。魔道士達は予想以上の戦力差に早くも右往左往し始めていた……


 古竜お爺ちゃんが建物の屋根を、一薙ぎで吹き飛ばしていくのを片っ端から花弁に変えていくと、たちまち花吹雪になっていく……たとえ小石でも誰にもあてたくないのだ。




 魔法国総帥は魔導具を幾つも懐に入れると、わざわざ自ら捕まりに、やって来てくれたオルデン王子を拘束し部屋に立て籠もった。


 自分に捕まえられると考えるなど、子供らしい無鉄砲ぶりに思わず苦笑してしまう。



 総帥の故郷には『世が乱れし時、古の竜が現れ焔にて浄める』という伝承が伝わっていた。


『古竜現る』と聞いた時、最早ここまでか……という思いと同時に、古竜を呼び覚ましたのだという奇妙な満足感があった。


 もう何も恐れるものはない……魔道士達から口を開けば「金がない」と口煩く言われる事もなく、アシエール国から魔導具の催促を受ける事もない……なんという開放感だろう。



 ひときわ大きな建物の屋根を飛ばすと、部屋の中には所狭しと机や棚が置かれ何に使うかわからないような器具や器があり書類や本が散乱している……


 そこには一人の魔道士が古びた机のかげに隠れるようにして階下を、うかがっていたが屋根が吹き飛ぶと慌てて振り向き、私達に向けて魔法を放ってきた。



 私とシリウスはマントを翻しながら魔道士を目掛けて飛び降りていった、上空からでも傍らにオルデン王子が居るのが見えたのだ。


 なんで、オルデン王子が捕まっているのか……解放されたんじゃないの? 人質にされてしまったの?



 私達が床に着地すると、魔道士を追って来たのか階下からニクスさんとアピスちゃんに、ミミねーさんが上がって来た。


 アピスちゃんが、隙をついて魔道士にミサイルのように突進していったが魔法で、はじかれてしまい慌てて、ニクスさんが抱きとめた隙に、魔道士がオルデン王子を盾にするように抱え込んだ。



 その時、カイルがオルデン王子の影から音もなく現れると魔道士に電撃をあて、オルデン王子をつかんでいた手が緩んだすきに、王子とともに飛び退く……


 カイルって優しくて頼りになるだけじゃなくて、自分の魔法を熟知している感じで尊敬してしまう……



 魔道士は、それでも諦めずに魔法を放ってきて、気がそれたミミねーさんを掴もうとしたが、逆にミミねーさんの掌打に呆気なく転がっていく。


 さすが、ミミねーさん! かっこいいよ~



「アピスちゃん、大丈夫です?」


「うん……」


「観念して降伏してください」


「あと、もう少しだったのに……誰が召喚したんだか、私の計画が台無しだ!」



 私とシリウスは、ポカンっと口を開けると魔道士を見つめた……



「……えっと………あなたが召喚したんじゃないんですか?」


「私ではないわ! 召喚者は、得てして思いどおりにはならないしな……召喚した者が判らんのか⁉………それは愉快だな! ハ、ハ、ハ!」




 高笑いしながら魔道士が懐から試験管のような管を数本、取り出すと自分の身体に叩きつけて割った。


 途端に色とりどりの煙と薬品臭で魔道士の身体がよく見えなくなる。



 煙の中から、まるで骨が砕けていくような、バキッボキッと嫌な音がしたかと思うと、中から大きな昆虫の足が出たかと思うと、続いて蟹のような足も出て来る……


 次々と蛇のような尻尾に触手、蜻蛉の羽のような物も見え本体が見えた時には思わず悲鳴を上げそうになった。


 魔道士の顔だった部分には複眼が並び胴体には鱗が足は鰐のようで、いたるとこから昆虫の足が付き出ている……まさか…キメラの研究でもしてたの?



 見た瞬間シリウス達は全身の毛を逆立てているし、私も全身に鳥肌がたったまま後ずさりながらも目を離す事が出来なかった、気持ち悪すぎるし……



 魔道士のキメラがカマキリのような腕を上げると私達に振り下ろそうとした瞬間、『バクッ‼』と音が聞こえたかと思うと古竜お爺ちゃんが姿を現した。




 魔道士を一口で咥え、噛み砕くと口に入り切らなかった触手や昆虫のような足が何本も床に落ちたが、床に届く前に霧散した……



 古竜お爺ちゃんの鼻からは呼吸する度に塵が漏れてくる……なんてことだろう!







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