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穴があったら入りたい

「まったく何度、言えばよいのですか?……短慮はお控えください!」


 私は思わず首をすくめると「す、すみません……でも、居ても立ってもいられなくて……」


 隊長さんは長〜い、ため息をつくと「で、作戦はあるんですか?」




 私はおずおずと陽動作戦の説明をしながらも兵達や獣人、エルフの方々に、ハンバーガーやホットドッグの他にチキンやハムのサンドイッチとフルーツデニッシュにシナモンロール、コーヒーやオレンジジュースを出していき、ケットシー達にはキスルンルンも……空腹が満たされたら怒りにくいよね?




 賄賂じゃないです、はるばる駆けつけてくれた、お礼ですよ……うん。


 て、古竜お爺ちゃんもレオン達も、ニクスさんとアピスちゃんも、さっき食べたばかりなのに、また食べるの⁉やれやれ………




 隊長さんはシナモンロールとコーヒーを飲みながら、しばし考え込むとニヤリとした。



「まず先に言っておきますが、オルデン王子は一人きりではありません。我が王が護衛も付けないでおくわけが無いでしょう! 護衛もあえて捕まり、御側で警護していますし随時、王に報告もしています」



「へっ?」私は口をポカンと開けたきり何も言えなかった。


「私達が、これ程早く到着出来たのも長老猫様の魔法によるものです。もう少し我々を信用して頂きたいですね」



「うちの隊の別名は雷電という位、もともと速いんです。奇襲、特攻、陽動、隠密作戦など速さが持味なんですよ」横から副官のカナルさんが得意そうに言う。


 と、いう事は私の寝落ち案件は隊を根底から覆す事態だったと………



「信用していないんじゃなくて、この人こう見えて気が短いの〜」シリウス君⁉ フォローになってないからね(泣)



「ニクス殿には何があっても同行するように、お願いしていて良かった…絶対に目を離したら駄目なお方ですね」ぐうの音も出ない、いたたまれないです……



「それとご存知ないようですが長老猫様はココ殿の祖父にして念話の師匠でもあります。逐一、長老猫様に報告されています」そろそろ穴を探そうかな……入りたい。


「アシエール国の王は……原因不明の体調不良により皇太子殿下が代わりに執務しており、まもなくアシエール国からの援軍も到着するかと思います」私の全身には変な汗が流れていく………



「僕……ニュースや映画の映像を見せただけだよぉ?」シリウスは納得いかないのか首を傾げている。


「なんでも、オルデン王子やロブスト皇太子殿下の顔が見えると、うわ言のように言うばかりだそうですが……」


「……シリウス殿、もしよろしければ私にも同じ映像とやらを、お見せいただけますか?」


「私もお願いします!」カナルさんも好奇心いっぱいの顔をしている。


 シリウスが、柏手のように肉球を打ち合わせると、隊長さんとカナルさんが目を閉じる……じきに二人とも眉間にシワを寄せ息をつめるように身体を強ばらせた。



「……なる程…私には母と弟達の顔に見えます」隊長さんは、ため息を吐きながら目を開けた。


「私も母と双子の兄に見えました……」カナルさんはブルッと身体を震わせる。



「……あれ〜何でだろう…僕ニュース見ながら、この人が事故や事件に巻き込まれた時はどうしようかなって思いながら見てたからかな…そうしようと思ってやったんじゃないけどさ……」


「そんな事を考えながら、ずっと一緒に見てたの?……恐い思いをさせちゃってたんだね…」


「君だって僕用の持出袋を作ってくれたりしてたじゃない……おかげで君が事故に合うのに間に合ったし」


「それはそうなんだけど……心配してくれて、ありがとうね」私はシリウスの眉間をゆっくりと撫でた。


「城中から、ほとんど出た事のない方には衝撃が大きかったのかもしれませんね……」


 この時の報告により、後にフェデルタ王にもお見せする事となってしまった。




「作戦は、こちらにアシエール国軍が反対側にはフォートリュス国軍が到着予定です。両軍で挟み打ちにします。オルデン王子達の元に居る兵とココ殿の手引きで救出及び保護を、魔法の使えるものは魔道士達の制圧を、そして古竜様、シリウス殿、ポン殿………」


「人質が解放されたら合図が上がります、その時は……」


「その時は?」



「……なんなら、更地にでもしてやりますか」



 私とシリウスは思わずキュンっとなって両手を頬にあてた。


 隊長さん!!! かっこいいです~


 じきに兵達が集結して来た。


 ふと、今アシエール国の兵達は、どんな思いなのだろうと考えてしまった………


 王の命令でとはいえ自分達で拐って来た人々を、今度は奪還するのだ。

 雷電隊が、此方側なのも目は離さないという事なのだろうか……




 古竜お爺ちゃんの咆哮が作戦開始の合図だ。





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