村人達の探索
万が一、隣国の兵達がまだ居た時の為に古竜お爺ちゃんのステルスモードで村の上空まで飛んで行った。
何もかもが透明になり聞こえるのは風をきる音だけだった。
頼りは互いの感触だけになり、初めてステルスモードに乗るカイル達はダイビングには慣れていても、全てが見えなくなってしまった事で少し震えていた。
私は両サイドのケットシー達に腕を回してやる。
王都に向かった時は、あれ程に時間がかかったというのに、またたく間に村の上空に到着してしまった……
お爺ちゃんはいつもより少しだけ早く飛んだだけなのに、本気で飛んだら、どの位のスピードになるんだろう……
お爺ちゃんが徐々に高度を下げてくれて私達は目を凝らしながら村を覗き込んだが、村は昼間だというのに誰も見当たらないようだった。
扉が開いたままの家が何軒もあり、抵抗しようとしたのか柄の折れた鋤や鍬が転がり落ちている……
古竜お爺ちゃんがホバーリングしてくれて私達は順番に地面に飛び降りると、身を引くくして建物の影に走って行った。
気配をうかがったが、やはり静まりかえっている……
「……誰も居ないの?」私は誰にともなく、つぶやいていた。
ケットシー達がクンクンと辺りを嗅いで回っていく。
しばらくして村の中心にある小さな広場に集まった。
「どうやら村人達は隣国に向かっているような……」緊張したニクスさんの顔を初めて見た気がする……
「ここの人達の匂いは知ってるけど……嗅いだことのない人の匂いがいっぱいで、金属や皮に馬……たぶん隣国の兵達だね……」
「僕いっつも、おやつもらってたのに…おばさん大丈夫かな?」
「ほとんど老人や女性に子供しか住んでなかったのに……隣国は何の為に連れ去ったんだろう?」私は唇を噛み締めた。
「少なくとも移動しているってことは……絶対に生きている!」
自分に言い聞かせるように私が言うと皆も強く頷いた。
「このまま後を追おう!」私とケットシー達で匂いを辿って徒歩で後を追い、ニクスさんとアピスちゃんが古竜お爺ちゃんとステルスモードで上空から隣国への道を進んでもらって、二手に別れて探索する事にした。
今では私もケットシー達と同じ位、早く走れるようになっていて(簡単な魔法だけだが四大原素が扱えるようになっていた)、じきに国境付近に到着した。
遠目に隣国の城壁の上に兵達が動いているのが見える……
見張りに、カイルとレオンを残し、私達は城壁から見えない所まで戻ると古竜お爺ちゃん達が合流するのを待った。
カイルの特技は影の中にまぎれ込む事で、レオンは岩や木に擬態出来る、なかなか隠密行動にたけた兄弟なのだ。
ニクスさんも上空からでは、わからなかったそうだ。
「どうやら、すでに隣国の中に連れていかれたみたいですね……」
「何とかして中に入れないかな……」
「どうやら、ついに私が役立つ時が来ましたね!」ニクスさんが何か、ドヤ顔してるんだけど……
なんでも直前にふれた魔法を使えるというものらしい。
「まず古竜様に全員で乗って、ステルスモードになります……本来ならば古竜様の身体から離れてしまうと解除されてしまいますが私の魔法で一時間程は、お側を離れても持続します」
お爺ちゃんのステルスモードとあわせたら、かなり追跡が楽になるよね……
ニクスさんは前国王の時代に来た事があるそうで、アシエール城の裏手に古竜お爺ちゃんが離着陸出来る位の空地があるそうで、万が一バラバラになった時のために集合場所として決めておく。
「私とシリウス、ニクスさんとアピスちゃん、カイルとレオンで探索しましょう……ミミねーさんとココちゃんはお爺ちゃんと上空で待機してて何かあれば、ココちゃん、念話で知らせてください」
「必ず二人一組で行動する事! 危険そうなら、すぐに逃げてね? ぜったい無理しないこと」
ココちゃん得意の念話で、カイルとレオンにも伝えてもらう。
そうしてステルスモードで、カイルとレオンに近づくと魔法ですくい上げ、衛兵にお爺ちゃんの風圧で感知されないように、いったん上空高く上がっていった。
アシエール国領土に入ったところで高度を下げていき街の上空を飛んでもらう。
ニクスさんが継続魔法をかけ、カイルとレオン、ニクスさんとアピスちゃんと順番にダイブして行く。
私とシリウスは手を繋いだまま、もう片方の手でお爺ちゃんの首筋を撫でるとダイブした。
すぐにシリウスが覚えのある匂いを辿り私を誘導して行く。
城下は妙に閑散としており歩く人もまばらで、こころなしか緊張感が漂っているような……
思ったよりも楽に後を辿って行くと城を通り過ぎてしまい、さらに街外れの検問所が見えて来た……
どういう事だろう……てっきりアシエール国内に居ると思っていたのに、国外に出たというのだろうか?




