ケットシーとピクシードラゴンとの女子会
館の裏側の庭には、かわるがわるケットシー達がやって来るようになった。
今日も起きてシリウス達と食堂に向かうと、なにやら入口付近で兵達が中を覗き込んで、囁きあったりしている……
「どうしたんです? 入らないですか?」私は兵達の間から中をうかがった。
なんと食堂内でアピスちゃんとニクスさんが揉めていたのだ! 喧嘩しているところなんて初めて見る……私達は慌てて中に入っていった。
てっきりダイビングに参加しないのは興味が無いからだとばかり思っていたのに……
「どうして私はダメなの? もともと飛べるんだし、一緒に飛ぼうよ~」アピスちゃんがニクスさんの袖や髪を引っ張りながら半泣きになっている、よほどダイビングがしたいらしい。
「怪我でもしたら大変だろう? 君に、もしもの事があったら!」以外に過保護なタイプだったか……
どうやらニクスさん、アピスちゃんを心配して参加させていなかったらしいんだけど……どちらも頭に血が上ってて周りの様子なんて見えていないみたい………やれやれ。
アピスちゃんは怒りのボルテージと共に体の色が、金色からどんどん紅く変っていき翼は黒みがかっていく……
「あ、あの……」なんとか声をかけようとするが反応は無く割って入るどころか、最早こちらの声も聞こえていないみたい……
居合わせた副官のカナルさんも、ただオロオロしながら何度かアピスちゃんに向かうが相手にされず青ざめるばかりだった……普段は飄々としたタイプなのに、隊長さんは居ないのかな? どこだろう?
私が部屋の中を見回していると、ルーチェちゃんが前に出てきてアピスちゃんのシッポを少し引っ張った。
アピスちゃんはびっくりしてルーチェちゃんを振り返って呆然としている。
「あっちで一緒に食べよう?」ルーチェちゃんがアピスちゃんの手を取ると私に目配せしてきた……
「そうだね! 一緒に食べよう……今日はプリンアラモードにしようかな」
シリウスとミルトも後に続こうとしたら、ルーチェちゃんがニクスさんの方へ頭を軽く振っている……ミルトは、すぐに察するとシリウスを引っ張って行った。
ミミねーさんとココちゃんも加わわったので、女子会でアピスちゃんを慰めますか……
「アピスちゃんの気持ち……すっごくわかる……ミルトも、そういうとこがあるのよ」
「あら! これ美味しわね~男子あるあるだね、あたしなんてしょっちゅう張り倒してるよ~」
「確かにね~シリウスもだわ。そこじゃないでしょって! 思うけど通じないみたいで……」
「やっぱり?」
おっとりしている、ココちゃんだけはキョトンとした顔でアピスちゃんとルーチェちゃんを交互に見つめている。
「でも相談するだけ良いですよ?シリウスなんて、いきなり空中に飛び出させたもの……」
「本当に⁉……でもシリウスならやりかねないわね!」
「ああ〜シリウスなら有りうるわ!」
「うちの郷、始まって以来のやんちゃ坊主でね~」
「だいたい一歳にならないうちに崖まで遊びに行っちゃったってのがね……」
「詳しい事は言わないけどね……あたしのシッポが元に戻るのに半年かかったって事だけは言えるよ!」ミミねーさんが声を潜めて私達の顔を見回す。
「やだ! 何があったの?」
「それがね………ここでは話せないよ~場所かえよう!」
聞き耳をたてて近付いて来ていたシリウス達に気がついてルーチェちゃんがすかさず立ち上がると、私達も一斉に席を立つ。
シリウス達を置いて、お喋りの続きのために私の部屋に向かった。
おやつを食べながら、とりとめのない話しをするのって最高だったわ……もちろんダイビング無しでね。
なんでだか私達までヒートアップしてしまって、その日は私の部屋で一緒に寝る事になり……何故か話しのながれで男子達は締め出されてしまった。
シリウスとミルトは「何で?」「僕……何もしてないよね?」って言ってもどうにもならなくて、とんだとばっちりだった(笑)
古竜お爺ちゃんも「わしは良いじゃろう〜」って言っても……男子枠で入れなかったのでした。
そのままアピスちゃんはニクスさんとは目も合わせず、私達の部屋で寝起きするようになった……
アピスちゃんも色々と、たまってたのかな……
ニクスさんは、ただ口をへの字にしたきりアピスちゃんに声をかけようともしない。
きっとアピスちゃんが折れるべきとか思っているんだろうな……どちらも頑固なところは、そっくりだよね。
シリウスとミルトがニクスさんを恨みがましく見つめても無視しているし兵達もなんとも居心地悪そうだった。
身に覚えのある人も、そうでない人も関係各位に飛び火しまくりだった……
後で思いかえしてみても、何でああなったのか……わからないんだけどね……疲れてたのかな?
アピスちゃんは三日間、口も聞かず目も合わせずで結局ニクスさんが………折れた……
よく三日も続けたよね、私なら一日も保たずにギブアップしてるわ。
しぶしぶ一緒に参加する事になったけど、泣く子には勝てないよね………
分かる、同士よ!




