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オルデン王子

「紹介しましょう、この者は隣国のオルデン第二王子です」




 見ると、七歳位の少年と、もう少し大きな少年が立っていた。


 歳の頃は十二、三歳位の少年で、真っ直ぐな金髪に水色の瞳の少年が前に出て来た。


「オルデンと申します。勇者様にお目にかかれて光栄です」まだ幼さの残る、はにかんだ顔が可愛らしい少年だった。




 どうやら隣国の王は国際交流や勉学のためと称して王族の交換を強要して来たそうで、先に第二王子を寄越されてしまい、仕方なく第一王女のリトス姫を送らざるおえなかったそうだ。




 日本の戦国時代にもよくあった、体の良い人質だ。姫は父王の苦慮を感じとり、自ら隣国に向かったという。




 どうもオルデン王子は父王の人間至上主義に反対し続けたあげく、側使えの幼馴染が獣人のクオーターだった事が露見し、処刑されそうになったのを阻止して、逃がしてしまったため父王に見限られたという事らしい……


 しかし、追いやられたとはいえ元から聡明な王子であったためか、フェデルタ王とも世代を超えて意気投合し、父とも師とも仰ぐ程だそう。




 一緒に居た年下の少年はフェデルタ三世の長男で皇太子のサンセール王子。


 金髪の巻毛が美しい利発そうな少年で、心配そうにオルデン王子を気遣っている。


「王子が送られて早一年とはいえ、そのような兆候は無かったが……」




「召喚魔法が使える程の者はおりませんでしたし、戦に明け暮れて魔法使いを呼ぶ財源も最早、無かったと思います」


 青ざめながらも王子は真っ直ぐに見つめて来た。


 見た目は稚げなのに話すと、すごくしっかりした印象の王子だ………




 そうなると、なおさら召喚者がわからなくなる。


 王子はポンの前に一歩踏み出すと、跪き頭を垂れた。


「私が弱く愚かなため、お諌めできぬまま……それでも父上様は父上様に変わりなく…お止めしたい、これ以上は何としてでも…どうか勇者様、お力をお貸し戴けないでしょうか?私では、もう…」


 王子が、こらえきれずに涙を流している事にあわてて、私は走り寄ると王子を立ち上がらせた。


 並ぶと王子の方が少し背は低いが、その眼差しはすでに立派に国や未来を憂えている一人の大人のものだった。




「一つ、お願いがあるのですが……」


「私の事は、ポンとお呼びください。勇者様とか言われると何とも妙な感じで、ですね」私は恥ずかしくて頬をかいた。


「微力ながら、私達に出来る最善の事をと考えています。ただ、なにぶんにも未だ右も左もわからない状態なので、お時間を頂きたいのです」




 シリウスもうなずきながら「僕も異世界に行っている間の事柄がわからないと助言もできないですし……ただ、あまり時間がないだろう事は理解していますので」

 ニクスさんも「エルフ族を代表して、私も尽力いたしますし」




 私は内心どんどん大事になっていく事に思案していた……出来る事と、やっていい事は必ずしも一致しないだろう………




「古竜様も目覚められた事ですし、勇者殿とシリウスが居れば大抵の事は大丈夫かと……そう心配めさるな」長老猫もうけあう。


 シリウスがアイテムボックスから、あらかじめ用意しておいた御挨拶用の菓子を渡す。


「なんか後先してしまいましたけど異世界のお菓子で、こちらがシフォンケーキで、これがフルーツケーキです。どうぞお納めください」


「いつでもお出し出来ますのでお声かけください」


「話に聞いていた甘味ですか? これはかたじけない、有難く頂戴致す」


 王様は笑いながら頷くと「先ずは身体を休めていただいた後で、ゆっくり話させて頂くとしましょう」




「グランツ!」隊長は直ぐに王の前にひざまずいた。


「引き続き、ポン殿達の護衛を任命する。街外れの元貴族の館を用意した。くれぐれも頼むぞ」


 隊長さん一瞬、固まったように見えたけど気のせいかな?


「ハッ!」と返事をすると、そのまま私達を引き連れて階下へと向かった。




 階下の部屋には既に平服に着替えた兵達が控えており、隊長もすぐに着替えて合流する。


 私は、ねんのためにとフード付きマントを渡され馬車に乗り込むと、後からシリウスと長老猫が乗って来る。




 ルーチェちゃんとミルトは後から来るそうで、いまだに人の近くは落ち着かないらしい。


 ニクスさんもフードを目深に被り、胸元にアピスちゃんを隠すように抱いて馬に乗る。


 古竜お爺ちゃんも馬サイズのまま透明になり馬車の横を歩いていく。







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