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フォートリュス国へ

 夜の間に王様から、なるべく早く秘密裏に古竜様共々お連れせよとの命が届き、夜明け前に出立する。


 馬車を使わず早駆けすれば夜には王城に辿り着けるという。


 ならばと、私とケットシー達は古竜お爺ちゃんに乗って行く事になってしまった。


 古竜様の飛行速度を考え、兵達が先に出立する。古竜お爺ちゃん、魔法で姿も消せるそうで……




「無理‼………私、高い所無理だから……隊長さんにくくられていく方が、まだマシだったし……」後退る私を問答無用でニクスさんが魔法で捕まえると、元の大きさに戻った古竜お爺ちゃんに無理やり乗せられてしまった。私の寝落ちへのフラストレーションですか?


 シリウスとルーチェちゃんが左右に座り前には長老猫が後ろにはミルトが座る。ニクスさんとアピスちゃんも、めったに経験出来る事では無いと、ミルトの後ろに乗り込む。




「それでは参るとするかの〜」呑気そうな声をかけて、古竜お爺ちゃんが魔法で姿を消した。


 問題は古竜お爺ちゃんの姿が消えるだけではなくて、乗っている全てのものも見えなくなるって事だった。


 声も聞こえるし触れるけど見えない! しかも地上はちゃんと見えてるって、どんだけ怖いか!


 シリウスに「寝ててよ〜」なんて言われたけれど


「寝れるか~! 何で皆、平気なの? 異世界怖いよ~もう色々、無理〜」って叫んでいたら、長老猫に魔法で昏倒させられたらしい。


 いや……ありがとうございます、意識があるよりはマシだったと思う、うん(泣)




 上空では鷹や鷲が並走して来て翼で、うやうやしく挨拶して来る。


 古竜お爺ちゃんの身体が傾いたかと思うと、さらに気流をとらえて上昇して行く。


 例えるなら、プライベートジェットに乗っているようだけど、全部透けていて自分の手さえ見えないのって、どうよ?


 気絶してなきゃ異世界勇者初の心臓麻痺を起こしてたわ!




 王城に着くと、王の居る部屋のバルコニーに皆は飛び降りて姿を現し、長老猫が先に王に挨拶をしに行く。


 古竜お爺ちゃんは最後に残っていた私を、どうやら空中に一度放り上げてから咥えたようで、よりにもよって、この瞬間に目が醒めた。


 手足がだらん〜と垂れていたかと思ったら、そのまま部屋の中に放り込まれた。悲鳴をあげる暇も無かった。後から馬サイズになった古竜お爺ちゃんが現れる。




 私は床に這いつくばったまま動く事も出来ない。


 すかさず長老猫がふんわりと着地させてくれたから? 状態異常耐性があるから? そういう問題では無いから……これは怒っていいところだと思うの。


 私の顔色を見て、シリウスが「ヒッ!」と息を飲むのが聞こえた。


 きっと私の唇は紫色になってたはず……状態異常耐性があるからか寒くは無かった。でもだからこそ純粋な恐怖で歯の根もあわない位、震えている。


 やりすぎた事にやっと気がついたのか、シリウスが慌てて私の背中を撫でてくれるけど無理なものは無理、覚えておくがいい〜怒った私は怖いぞ!


「………ヴ……た…」言葉に成らない声だけがもれる。


 先に到着していた隊長さんが、慌てて助け起こしてくれた。




 どうやら傍目には、いきなり空中に現れたように見えたようで、続々と楽しそうに『自ら』降りて来たケットシー達とは違い、私が空中に現れた時に意識が無いのはわかったそうだ。


 後は推して知るべしで、腰の抜けた私をソファに座らせてくれた。


 王様だけでなく、その場に居た少年達や侍従達が甲斐甲斐しく、私に飲み物を勧めたり、毛布を掛けてくれたりと、いたわるように優しく声をかけてくれた。


 この恐怖を判ってくれるのは、人族だけらしい……




「勇者殿、急かして申し訳なかった、大変な思いをされた事だろう。私はこのフォートリュス国の王でフェデルタ3世と申す。よくぞ参られた、感謝致す」


 私はかろうじて会釈を返すので精一杯だった。




 王様は見た感じは、四十代半ば位のよく通る声に屈託のない笑顔で、いかめしさより雄々しい偉丈夫だ。

 第一印象は大きな熊みたいな人だった……王様に対して失礼かもしれないけど…今まで出会った事のない包容力を感じてしまった。


「本来ならば国をあげて、お出迎えすべきところですが、いよいよ隣国の動きが怪しくなって来ましてな……万が一を考え秘密裏にお迎えした次第で」私とシリウスは目を見交わした。




「あの……長老猫から、こちらの国が召喚した可能性は低いとうかがったのですが、やはり?」


 王様は一瞬キョトンとした顔をしたが、大声で笑いだした。


「わが国は温暖な気候で農業に力を入れて来ましてな……強い魔法使いなら魔法国のウイースウエルの方に行くでしょうし…わが国には元々、召喚魔法すら伝わってはおりませんよ」


「では隣国が?」


 王は顎をさすりながら「それも俄には信じられんのです、偏った考えの主ではあるが……」そこで王は横に控えていた少年を手招きした。







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