結局……食い意地ですね
王城への道程は遅遅として進まず、なんとか馬車を変性してみようかな……
ずっと御飯しか変性させてなかったんだけど……変性魔法、初心者なので、あっているのか分からないけど、切実に願う事と具体的にイメージすると上手くいくみたい。
清潔で頑丈、雨風にも対応と……なんとか側面に窓とドアをつけただけのシンプルな箱型馬車が出来た。
中にシリウスのアイテムボックスに入れておいてくれた毛布で、クッションとか居心地良くなるように変性させる。
私の寝落ち問題と食料の不安がなくなり隊の雰囲気も明るくなった、あとは王城までまっしぐらですね。
この日の夕食はチキンクリームシチューにチーズトースト添え、デザートはモンブランにしてみた。
ケットシーもピクシードラゴンも同じ物を食べれるし、皆ものすごく食べるので魔法で作るとはいえ量は多い。
エルフのニクスさんも見た目は細いのに大食漢だったわ(笑)
皆、食事休憩を楽しみにしてくれていて野営準備しながらも期待の眼差しが…
今日の昼食はどうしようかとシリウスに相談、なんせ異世界の食事がわかるのシリウスだけだし、毎食メニューは迷ってしまうんだよね……
「カツサンド食べてみたい〜」って、あとは自分が食べたかったフルーツデニッシュ、今日はイチゴと桃の二種類となんて話してると、またしても地震が。
あんまりに地震が多いので、火山地帯なのかと思ったら地震自体が珍しいらしい。また揺れだしたが、おさまるどころかどんどん激しく揺れだして立っていられないほどだ。
崖からは離れていた野営地にも岩が転がり落ちてきて、私は堪らず頭に手を当てる。あれ……何でだか座布団が出て来た…
何を考えてる自分! 焦るなイメージが大事………
皆の上にも、大きく、大きく…シールド!
岩がドーム状に皆を避けて転がり落ちて行く、フ〜ッ危機一髪。
と、いきなり崖の前面が爆発したように見え、耳鳴りがして土埃で何も見えなくなった。
シールド内は粉塵も防いでくれてるけど、そのシールド越しに粉塵が舞い上がり視界はどうしようもない。
粉塵の中、地響きだけが身体に伝わって来る。
たまらずルーチェちゃんが風魔法で粉塵を吹き払うと、全員金縛りにあったように固まった。
崖の中から大きなドラゴンが、ゆっくりと出て来るところだった!
誰一人、動くどころか目をそらす事も出来ない、ドラゴンが一歩、また一歩と、歩く度に身体が浮き上がりかける。と、そこで急にドラゴンはへたり込んだ。
ピクシードラゴンのアピスちゃんが飛び出して行くのをエルフのニクスさんが慌てて追いかけて行く。
ピクシードラゴンがニクスさんに叫んでいる……あれ『古竜』って聞こえた?
さっきまでピクシードラゴンの言葉は解らなかったんだけど……
「ねえ今、古竜って聞こえた?」ドラゴンから目は離さずにシリウスに聞く。
シリウスも呆然としたままだ。「……うん」それから慌てて私を振り返ると目を丸くしている。「アピスちゃんの言った事わかったの?」私は頬をかいた。
「また出来る事が増えちゃった……」
とりあえずシールドを解除して兵達には森の中まで下がってもらう、何かあれば直ぐに王城に伝令が走れるだろう。
私とシリウスはニクスさん達の元へ歩いて行った。
ルーチェちゃんとミルトもついて来る。近づく程に、その大きさに圧倒される。
アピスちゃんは興奮しながらも「……伝説の古竜様に間違いないの! まだ生きていらしたなんて…」おっ、やっぱり女の子だったか~仕草とか、そうじゃないかなと思ってたんだ~
「確かに、ここ千年程は噂も聞かず亡くなったものとばかり思っていたよ……」
近づいてみると、古竜は瞬きはしているが力つきたのか動けないようだ。
「古竜って?」
「一万年は生きているだろうと言われる伝説の竜です……まさか、このような所にいらっしゃるとは………」一万年か………全く想像出来ない。
それよりニクスさんが言った、千年は噂に聞かなかったていうのが気になる………
「古竜様? お水、飲みます?」竜の目が水と聞いて輝いたように見えた。
私は、ニクスさんから皮水筒を受け取ると、地面に伏したままの古竜の口に差し込み水道の蛇口をイメージする、ひねれば、ずっと出続ける蛇口……
最初こそ口の際から、こぼしたが直ぐにゴクゴク飲みこんでいく。
瞳に元気が戻ってきたようだ。
お腹も減ってるんだろうな~って、……そういえば皆、お昼がまだだった。
「古竜様の食事って、やっぱりお肉? 千年ぶりでも?」皆、やっぱり肉だよね~って口々に言うので古竜様には牛肉のタタキにしてみよう。
生肉を出すのはね……私的に無理っていうか、血を滴らせながら食べてる図は見れそうにないです。
皆の昼食は、カツサンドとデニッシュにミネストローネスープにする。
古竜様用に、そこら辺に転がっている大きな岩を使って変性させていくのだが、さすが千年ぶりの食事とあって、作ったはしからかぶりついていく。
もう牛、何頭分だよ? って感じだったが、兵達が食べているデニッシュをジッ〜と見つめ出した古竜様。
ウ〜ムッ食べれるのか? 食べてよいのか? とりあえず一つ大きなデニッシュを変性させてみる。
古竜様クンクンと匂いを嗅いで一口、食べると雷が鳴った! 何? どこから? 怖い!
残りを一気に口に入れる「もっとじゃ〜!」兵達、思わず後退りしてましたよ。お腹いっぱいにしとけば人間は襲わないよね? 多分。
さらに幾つもデニッシュを出してやる。甘い匂いで、私はお腹がいっぱいですよ。
やっと古竜様が満足してくれて、私は自分用に梅干しのおにぎりとアサリの味噌汁を出した。
もう軽く済ませて寝たいの、力尽きましたよ。私は馬車まで何とか辿り付くと中にもぐり込んだ。
本来の11話目です。ごめんなさいm(_ _;)m




