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第99話 怒鳴り

「前回のクイズの答えは『美月』だ……。本当によくない問題だ……」

 美月は怯えながら俺を見る。

 少し震えていた。


 「自分を道具だと思うな。何があっても絶対に」


 ここらへんでやっと落ち着いてきた。

 美月は小さくうなずく。


 ……ヤバい……。


 「……あっと……美月……。あ、えっと……怒鳴ったりして悪い」

 「う、うん……」


 やっぱりヤバいな……俺……。

 これじゃ芽依と出会う前よりひどいじゃねぇか……。


 「ちょっと、変なこと思い出しちまって……」

 「……私のせいだよね……?」


 ……は……?


 「私が……思い出させちゃったんだよね……」

 「……いや、まぁ……」


 なんて言おう……。

 ……この際、言っちまっていいか。


 美月には知っててもらいたいし。


 「美月、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど、聞いてくれるか?」


 俺はできるだけ笑顔をつくる。

 でも多分上手く笑えてないだろう。


 「うん……」

 「……できたらみんなに内緒にしてほしいんだけど……。特に水麗」

 「わかった……」

 「実はさ、俺と水麗、本当の兄弟じゃないんだ」


 俺が言うと、美月は目を大きくしてめっちゃ驚いている。

 気づかなかったんだ……。


 「兄妹の関係になったのはここに入学する直前。俺の母さんが再婚したんだ。それまでさ、俺は人の死体を二つ見たんだ」


 この言葉で美月はさらに驚く。

 まぁ、そうだよな……。


 普通、人の死体なんかみないよな。


 「一つは父さん。自殺してるところを見た。……それとさ、俺が少食ってこと知ってるよな?」


 美月は黙ってうなずく。

 ここからだ……。


 「昔さ、俺の家が貧乏で食うものもなかったんだ。ずっと少ない量の飯食ってきたから少食になっちゃったんだ。……で、父さんが自殺した理由なんだけど……」


 ……俺が言おうとしている七文字が言いにくい……。

 言おうとしてるんだけど、毎回止まる。


 いや、言うんだ。


 俺は一回深呼吸をしてから言った。


 「生命保険なんだ」


 美月はさらに驚く。

 これ以上驚くことができるんだ……。


 やっと言えた……。

 ずっと誰かに言えなかったことが。


 ずっと誰かに聞いてほしかったのか。


 ……でも、次の話の方が聞いてほしい。


 「……で、二つ目は―――」







 「あ、やっと来た」


 教室に戻ると、水麗が自分の席に座って教科書を読んでいた。

 俺が廊下に出ていってから何分経ったっけ……。


 「? 美月ちゃん? なんか元気ないね」


 水麗が美月の表情に気づく。

 今の美月の表情はいつもより暗い。


 「あ、うん……大丈夫……」


 美月は地声で言う。

 なんか……迷惑かけちまったかもな……。


 ごめんな、美月……。


 ……もう一人、謝る人がいたな。


 悪い……芽依……。

「康輝……そうだったんだ……。ヤバイ……なんか落ち込んでる……。早くクイズやらなきゃ……。『美月は何部のマネージャー?』。……あ、それと次話で100話だね! 読んでくれている皆さんのおかげだよ! ……あ、我のキャラが崩壊した……」

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