第98話 なんであんなこと言ったんだ?
「前回のクイズの答えは『十六歳』だ」
「お前らさ……なんであんなこと言ったんだ……?」
昼休み、いつものメンバーが俺の周りにいたから俺はそいつらに話しかけた。
特に大雅、水麗、美月。
「あんなこととはなんだ?」
「私変なこと言ったっけ?」
「変なこと……変なこと……。……! 思い出した! この間お前に『康輝、ピーマン食いながら喧嘩しようぜ!』って言ったことだろ!」
……全員ヤバいやつだ……。
「違う! なんで俺を桃太郎に推薦したかって意味だ!」
「えー、だってお兄ちゃん、桃太郎が似合うし……」
結局、俺は桃太郎役になった。
水麗は『鬼にとらわれた人間』、美月は『毒を使って戦う科学者』、大雅は『鬼のリーダー』になった。
皆嘉は『桃太郎の味方の村人』、白斗は『頭が悪そうで実は天才のオタク』、冬乃は『桃太郎の味方で鬼と戦うクールな女』になった気がする。
白斗と冬乃……逆だろ……。
冬乃にクールな役なんてできるのか……?
いや、今はその話じゃない。
「あのな、俺はもう目立ちたくないんだよ」
「えー? なんで?」
「理由なんかねぇよ。目立ちたくないだけだ」
「……でもお兄ちゃん、かっこいいから何をしても目立っちゃうよ?」
いや、俺が普通の役やれば絶対に目立たないぞ?
逆に水麗が目立つと思う。
かわいいし。
「……もういいや」
俺は水麗たちに背中を見せ、教室から出ようとする。
やっぱイライラしたときはあれだな。
『康輝……ダメだよ……そんなの……。私にできることはなんでもするから……』
……芽依……。
……そうだな、ダメだよな。
何にも変わってねぇな、俺は。
お前がいないと本当にダメな男だ。
「? お兄ちゃん? どうしたの?」
水麗が俺の前に出る。
「いや、なんでもないけど?」
「え? いや、何か言ってたよ?」
……マジか……声に出てたか……。
そこもなおさないとな。
「あ、ああ……ちょっと考え事しててな……」
「……康輝、ちょっと来て」
美月が地声になって言う。
そして、廊下に出た。
なんだ……?
そう思いながら俺も廊下に行く。
すると、美月は俺の目にハンカチを当てる。
「二回目だね、これやるの」
美月は俺の頬を拭く。
まさか……。
俺……泣いてんのか……?
「ごめんね、色々と。ちゃんと康輝のこと考えてなくて」
「え、あ、いや……」
「今から先生に言えば、変えてもらえるかもしれない。私言ってくるね」
「いや、別に役が死ぬほど嫌なわけじゃない。ちょっと思い出しちまって……」
なんで俺……こんなこと言ってるんだ……?
「……そっか……つらかったらさ、私でよければ道具になるよ?」
……美月……?
「いくら殴ってもいいし、ホテルも付き合うし。なんでもするから―――」
「美月!」
俺は怒鳴った。
俺の身体が勝手に怒鳴ったのだ。
美月は俺を見て驚いてる。
でも、そんなことを気にすることはできない。
俺は続けて言葉が出た。
「そんな考え方はやめろ!」
「康輝……。それと、ここでホテル行くって言ってる我もヤバイな……。ではクイズだ! 『夏祭りのとき、ナンパされたのは?』。良くないクイズだな」




