第97話 推薦
「前後のクイズの答えは『十時』だ! 健康だな……」
「『この役やりたい』って人は風崎以外いないのか?」
まぁ、そんなすぐに決まらないよな、普通。
だってこの物語カオスすぎるもん。
「いないのか……。じゃあ推薦はあるか?」
推薦……?
『この人はこの役がいいと思います!』ってやつか?
まだみんなそういうの決まってないでしょ。
物語が頭に入らなくて。
「お、意外といるな……水麗と……室井と……風崎……桃山……」
……あれ?
室井って誰だっけ……。
……あ、思い出した。
美月だ。
このメンバー……なんか嫌な予感がする……。
「じゃあまず桃山から訊こう。誰がいいんだ?」
「私は白斗が『村の小娘』を演じたらいいと思いま―す!」
性別違うし……。
まだ『お婆さん』とかならできると思うけど、小娘は……。
冬乃、絶対お前ふざけてるだろ……。
「そうか! 霧宮はどう思う? 小娘を演じたいか?」
「絶対に嫌です。僕は冬乃がお爺さん役を演じたらいいと思います」
「え!? お爺さん!? 私がお爺さんに見えるの!? すっごく傷つくんだけど!」
……白斗と冬乃のコンビ……面白いな……。
個人的にはめっちゃ好き。
「わかった、じゃあ保留な。次、風崎はなんだ?」
「俺か? 俺はな、康輝が桃太郎がいいと思う」
まぁ、そうだよな。
そう言うと思ってた。
俺が桃太郎じゃなきゃ、お前と戦えないもんな。
「おお! 康輝が桃太郎か! じゃあ髪をピンク色に染めないとな!」
なんでそうなるの……?
「昨日は緑だったからな! 康輝!」
……どんどん私生活が暴露されてく……。
いや、あれは俺の意思じゃない。
冬乃と見知らぬ美容師さんがやったんだ。
俺は何もしていない。
「水麗はなんだ?」
「私もお兄ちゃんが桃太郎でいいと思います。そうすれば大雅との戦いを見られるし」
水麗まで……。
兄が喧嘩してるシーンを見たいのか……?
普通逆の気がする……。
「そうか! 俺も見たいな!」
見たいんだ……俺と大雅の戦闘シーン。
「室井は誰だ?」
「我も康輝が桃太郎役に一票」
なんで……俺が桃太郎なの……?
俺は普通に目立たないキャラがいいんだけど……。
これ以上目立ちたくないし。
『そこら辺にいる少年A』がいいな……。
地味で。
「よし、康輝も桃太郎やりたいか? 康輝でいいか?」
前崎先生は俺にゆっくりと近づいて、とても圧のある声で言う。
なんで近づくの……?
「いや……俺以外に桃太郎やりたい人っていますよね……? その人がいいと思うんですけど……」
「……誰か桃太郎やりたい人いる?」
……なんで……誰も手を挙げないんだ……。
主役だよ!?
みんなやりたいでしょ!?
「いないのかな……? じゃあ候補は康輝?」
……もう目立ちたくないのに……。
「推薦か……確かに康輝が桃太郎は似合うな……ではクイズだ! 『現時点での康輝の年齢は?』。考えればわかるな」




