第96話 配役
「前回のクイズの答えは『③』だ!」
「今日は役を決めまーす。台本はもう用意してあるので、今から配りまーす」
前崎先生が講堂でマイクに向かって言う。
一年生全員が講堂にいる。
なんか体育祭のことに話すって言ってたけど、多分例の『桃太郎』についてだろう。
隣のやつが俺に冊子を渡す。
何冊もある。
「自分の分を取って隣のやつに渡して」
隣のやつが言う。
俺は言われた通り一冊とって、隣りに座ってる大雅に渡す。
堂々と『桃太郎』と書いてある。
どんなのかな……?
試しに一ページめくってみる。
『お婆さん――――はぁ、川で洗濯は大変だなー、これじゃあピーマンになっちまうよ。
〜川から大きな桃が流れる〜
お婆さん――――ありゃ、こりゃすごい。帰ってあのジジイに食わせるか』
……ひどい……。
ツッコミどころ多すぎるだろ……。
お婆さん……頭おかしいって……。
「はい、じゃあ二十分あげるから一通り目を通してー」
ええ……これやるの……?
一通り読んだ。
一言で表すなら『これは桃太郎ではない』。
結構ストーリーが変わってる。
手下がイヌ、サル、キジ、王子様、キムチ鍋、隣のクラスの田中くんになってる。
桃太郎は桃から生まれてくるはずなのに、台所にあるピーマンから生まれてきてる。
「見てもらったからわかると思うけど、色々な役がありまーす。今のところ、やりたいものがある人ー、手挙げてー」
いやいや、こんなカオスな作品、すぐに『この役やりたい』って人がいるわけ――――
「はーい!」
隣りに座ってるやつが手を挙げる。
いるんだ……。
……って隣大雅じゃん!
お前……やりたい役なんてあんのか……?
「はい、風崎! 何の役をやりたいんだ?」
「鬼! 鬼がいい! そうすれば康輝と戦えるだろ?」
……やっぱり喧嘩バカだった……。
てか、お前が鬼になったからって俺と戦えるとは限らねぇぞ?
俺がお爺さん役だったら絶対戦えないし。
……なんかこういうの前にも言った気がする。
「そうか! じゃあ向こうの意見も訊かないとな! 昨日ナンパしていた康輝! 何の役やりたい?」
ちょっ、先生!?
なんか余計なこと言ってません!?
『昨日ナンパしていた』は言わないでくださいよ!
ほら、クスクス聞こえる!
向こうにいる女子生徒はなんかコソコソ話してるし!
「? どうした? 昨日ナンパしていた康輝」
先生!
だからその言い方やめてください!
「俺は……何でもいいです……」
「そっか!」
ナンパ……全部冬乃のせいだ……。
どうしよう……俺の学校の居場所がなくなる……。
「桃太郎……作品を崩壊しておるな……。ではクイズだ! 『康輝はいつも何時に寝る?』。覚えているか? それと、『我の雑談部屋』というところで作者が書いていたが、中学生の作者が色々な質問に答えてくれるらしい。詳しくは活動報告で!」




