第91話 康輝のナンパ
「前回のクイズの答えは『九月一日』だ!」
「どうせならかわいい子がいいよねー」
水麗が辺りを見渡す。
こいつも楽しんでるのか……?
ちょっとからかってやろ……。
「かわいい子?」
「うん!」
「じゃあ俺決めた」
俺は水麗に気が付かれないように、水麗の肩に手を伸ばす。
そしてそのまま抱いた。
「じゃあお前だな」
「おお! これは良いものを見た!」
美月がめっちゃ興奮している。
一方、冬乃は目を大きくしている。
「ちょっと待ってくれ、写真を撮る!」
美月がポケットからスマホを出す。
写真撮られるのはちょっとな……。
水麗が嫌かもしれないし……。
俺は水麗をはなす。
水麗はめっちゃ顔が赤くて、息を切らしている。
……苦しかったのかな……息できなかったのかな……?
それとも単に俺のことが嫌いで、泣きそうになってるだけかな……?
「まぁ、水麗ちゃんもそうなるよね」
冬乃は少し笑う。
いつもの笑いとは違う。
なんて言うんだろう……いつもよりかわいい……?
微笑んでるって言うのかな……?
水麗や美月に負けないくらいかわいい。
いつもこんな顔してたら、モテるだろうな……。
「そ、そ、それより! 早くナンパして!」
水麗がめっちゃ早口で言う。
……照れてるのか……?
「ナンパって……どの女にすればいいんだよ……」
「えーっと……あの人!」
冬乃が、二人の女に指を差す。
その人たちも高校生っぽい。
「ほら、行って!」
冬乃が俺の背中を押す。
俺バランスを崩して、その人たちのところにフラフラしながら行く。
しかも早歩きで。
動きが止まった時には、その女たちは俺をガン見している。
えっと……マジでナンパしなきゃいけないの……?
なんて言えばいいんだろう……。
「えっと……あの……今……大丈夫ですか……?」
「え、あ、はい……」
気まず……。
「えっと……連絡先……いいですか……」
「あ、はい……」
女たちはスマホを出す。
この人たち、大丈夫か?
こんな簡単に男と連絡先交換して……。
結局連絡先交換した。
それと、本題を……。
「あの、一緒にプリクラとりませんか?」
「え、あ、それは……嬉しいけど……時間がないので……」
……あれ? 失敗?
「で、でも……明日以降ならいいです! メールで話しましょう!」
女たちはそう言ってどこかに行った。
……失敗した……。
大雅と皆嘉は成功したのに……。
どうしよう……。
「? お前康輝か!」
後ろから聞き覚えのある声。
この声……。
振り向くと、俺の前に前崎先生がいた。
「先生!」
「ナンパしてたのか!」
「いや、あれは違うんです! ……そうだ、水麗たちが―――」
俺は水麗たちがいるところを見る。
しかし、そこに水麗たちはいなかった。
「? 水麗がどうした?」
「え、いや、さっきまでアイツいたんです!」
「まぁ、思春期の男子だもんな! ナンパ頑張れよ!」
前崎先生は俺の肩をたたき、どこかに行った。
ヤバい……明日からどんな顔して学校に行こう……。
「康輝……。学校行きにくくなったな……。ではクイズだ! 『美月が出てきたときは何話目?』。これは知ってるだろ! 知ってるよね? 知っててね……?」




