第9話 教科書運び
「よし、次は偶数の人がロッカーに行って確認しろ」
俺らが席に座ると、先生がそう言う。
すると、先刻はロッカーに行かなかった人たちが廊下に行く。
そして、先生も廊下に行く。
……ん?
あいつ……新坂……俺の二つ前に座ってる……。
「ねぇねぇ、今日カラオケ行かない?」
そいつは隣の女子にそう話しかけている。
テメェの方がキモイぜ。
俺はそう思った。
しばらくすると、先生と生徒が戻ってくる。
「次は教科書を取りに行く。一番は二番、三番は四番……って感じで二人一組を組んで俺についてこい」
先生はそう言い、廊下に出る。
いやいや、先生、ちょっとは待ってよ。
俺は後ろを見る。
そこには、眠っている男子生徒がいた。
……ん? 寝てる!?
こいつ、出席番号偶数からさっき廊下に行ったよな!?
眠るの速くない!?
いや、早く起こさなきゃ。
「あ、あの……」
「んん……もう食べられないよ……」
「……じゃあ食うなよ」
俺はそいつの寝言に小声でツッコミを入れる。
こんなことをしている場合じゃない!
みんな教室から出ていく!
「あ、あの!」
「んん……」
「起きろ! いつまで寝てんだ!」
俺が叫ぶ。
すると、その男は眠そうに体を起こす。
「朝ご飯?」
「違う! 早く廊下出るぞ!」
俺はそいつの手を引き、廊下に出る。
ヤバい、結構みんなから離れてる。
「行くぞ」
「……走るか?」
男が突然真顔で言う。
「あ、ああ!」
「そっか、じゃあ行くか」
男は腰を低くした。
そして、何をするのか見ていると……。
男は急に走り出した。
めっちゃ速い。
俺も急いで走り出す。
この俺でも追いつくのがやっとだ。
そしてなんとか俺らはみんなに追いついた。
「教科書は量が多いから、まず奇数のやつの教科書を教室に運ぶのを偶数のやつも手伝ってやれ」
先生がそう言う。
ここには大きな机があり、その上に大量の教科書があった。
「じゃ、手伝ってくれ」
俺がペアの男に言う。
しかし、反応がない。
「おい?」
俺がその男を見る。
……! こいつ……立ちながら寝てやがる!
「おい、起きろ!」
「……んん……朝ご飯?」
「違ぇ! 俺の教科書運ぶの手伝え!」
一分くらい俺が説明したら、やっと運んでくれた。
この学校には変なやつしかいないのか?
「橋本康輝……」
そう呟やいたのは新坂皆嘉。
「俺に恥をかかせやがって……」
「どうなるか思い知らせてやる……」
立ちながら寝る……すごいですね!
そういう特技ほしかったなぁ……