第80話 人気?
「前回のクイズの答えは『十二番』だ!」
「今日の夕飯何がいい?」
登校してたら水麗が訊いてきた。
「特に食べたいものはないな……」
「えー、それが一番困るんだよな……」
だって……特に食べたいものはないし……。
そう思ってたら学校に着いてた。
そしてあることに気づいた。
教室が騒がしい。
「……有名人でもいるのかな……?」
水麗が中をのぞく。
俺も中をのぞいた。
「皆嘉くん! 今度私と遊ぼ!」
「あ! じゃあ私も!」
数人の女子が皆嘉の周りにいる。
……なんだ……あれ……。
「マジで意味がわからないのう……」
隣から美月の声。
気がついたら俺と水麗の隣り美月がいた。
美月は女子生徒たちを睨んでいる。
「美月、何か知ってるのか?」
「朝学校に来たら、皆嘉の周りに女子が集まっていた。何だろうと思って見てたら、どうやらあやつらは皆嘉のことが好きらしい。マジでムカつく……」
……は? 皆嘉のことが好き……?
確かに意味わかんねぇんだけど。
お前ら皆嘉のこといじめてたんだぞ?
好きな人いじめて楽しんでたのか……?
「ちょっと行ってくる」
美月はスタスタと女子生徒たちのところへ行った。
「え、ちょっ、美月ちゃん!?」
水麗は美月のあとを追う。
俺も二人のあとを追った。
「お主等、ちょっといいか?」
美月は一人の女子生徒の肩に手を乗せる。
すると、女子生徒全員が美月を睨む。
皆嘉は安心してるみたいだ。
「話したいことがあるんだが」
「は? 今皆嘉くんと話してるんだけど」
「そうそう、だから後でね」
女子生徒たちは再び皆嘉を見ようとする。
「―――気持ち悪いんだよ」
美月はボソッとつぶやく。
しかも地声で。
俺と水麗以外の人は全員驚いた表情で美月を見る。
「テメェら、皆嘉のこと好きなんだろ? じゃあなんで皆嘉をいじめたんだよ」
美月は地声のまま言う。
……美月が人に『テメェ』って言った……。
水麗は美月を怖がっているみたいだ。
確かに怖いな……あいつ……。
「いや……私たちはただ見てただけだよ? 皆嘉くんにはなーんにも悪いことしてないし。気持ち悪い? お前のほうが気持ち悪いよ!」
女子生徒たちは声を上げて笑い、美月の肩を押す。
皆嘉がそれを見て、美月に向かおうとした。
……確かに今のは許せねぇな……。
「見てただけ……? 見てたら無罪なのかよ……」
美月が続けて言うので、俺たちは動きをとめた。
「友達が人を殺して、それをテメェらが嘲笑ったとする。そして人の死体をそのままにしておいた。そして警察に逮捕されたとき『見てただけです』で無罪になると思ってんのか……?」
この言葉で女子生徒たちは何かブツブツ言いながら教室を出ていった。
「……あー、ムカつくのう……!」
やっと美月はいつもの声に戻る。
「美月ちゃん……」
「……! おお! すまぬな! つい昔みたいな態度をとってしまった!」
昔みたいな態度……。
そういえばこいつ、昔メスガキだったな……。
俺の想像以上に怖いな……美月って……。
「いやー、本当の我がバレてしまったな……。多分我のファン減ったな……。ではクイズだ! 『バーベキューに行ったとき、大雅は康輝に向かって、遅れたけど誕生日プレゼント、と言って何かを投げた。何を投げた?』。……また言うことがない……」




