第8話 ロッカー
「よし、ここがお前らのロッカーだ。出席番号のロッカーを使ってくれ」
先生がそう言い、教室に戻る。
ロッカーは教室の隣にあり、それぞれのロッカーには扉がついており、そこに番号が書いてある。
……そして、なぜか皆、ロッカーを開ける。
俺も皆に合わせてロッカーを開ける。
すると、誰かの肘が俺の顔面に直撃する。
……これはどう考えても、わざとやっている。
俺はそのまま倒れる。
「痛……!」
「あ、いたんだ。ま、お前みたいなやつにはそういう姿が似合うね」
……こいつが俺を殴ったのか。
「ねぇ、痛い? かわいそうに」
「ねぇ!」
男が言っていると、誰かが男に言う。
水麗の声だ。
「何? 俺に一目惚れしちゃった?」
「そんなわけないでしょ! とりあえず、お兄ちゃんに謝って!」
「は? なんで?」
「そんなことも分からないの? バカなんだね!」
水麗の声が大きくなる。
そのせいで、皆が注目する。
水麗……反応早すぎだろ……。
俺が倒れて三秒くらいしか経ってなかったのに、『ねぇ!』ってこの男に言ったぞ……。
「教えてあげるよ。あなたがお兄ちゃんを殴ったから謝って!」
「肘打ちだよ。お前の方がバカなんじゃない?」
「どっちも変わらないよ!」
「水麗!」
俺は立ち上がり、水麗に近づく。
「早く謝って!」
「ねぇ、うるさいんだけど。静かにできないの? 本当にバカだね」
「暴力振って、謝れない人間の方がバカだよ!」
「俺にそんなこと言っていいの? 俺はね、女の子でも殴れる人なんだよ?」
男が水麗を殴ろうとする。
ヤバい!
俺は男の手を片手で抑える。
「!」
「……さっきから黙って聞いてりゃ、好き放題言いやがって……」
「ねぇ、キモイから放してくれない?」
「……そうやって人にすぐ暴力するお前の方がキモイぜ……」
ヤバい、ここで怒っちゃだめだ。
クソ……分かってんだけど……。
「……俺以外の人を傷つけようとするなよ……!」
「は? キモ。ヒーロー気取り?」
「……テメェはキモイしか悪口言えないのか?」
男は黙りこみ、手を引く。
「……俺は新坂皆嘉だ。忘れんじゃねぇぞ」
男はそう言い、教室に戻る。
それに続いて皆も教室に行く。
「……お兄ちゃん、ありがとう……」
「ああ、お前が無事ならよかった」
「……うん、教室、戻る?」
「そうだな」
俺たちはそう言い、教室の中に入る。
新坂皆嘉。
あいつは、これで終わらない気がする……。
それと、俺も怒るタイミング早かったな……。
急に怒ったぞ……。
水麗のことを言えないな。
康輝くん、強いですね!