第72話 作戦実行
「前回のクイズの答えは『青』だ!」
「な、なんだよ……これ……!」
昨日俺を殴った男子生徒が教室を見て驚いている。
教室はホコリが大量にあって、汚かった。
他に来た生徒たちも驚いている。
「あーあ、汚ぇな」
俺はわざとらしく言う。
ちなみに俺は生徒たちの後ろにいる。
俺の声に驚いたのか、生徒たちはビクッとする。
「なんでこんな汚ぇと思う?」
「は……は……?」
「いっつも皆嘉が掃除してくれてたんだよ。今は保健室にいるから今日は掃除できてねぇんだ」
俺はホウキやチリトリを出す。
そしてそれを壁にかけ、床をホウキで掃き始める。
「テメェらも早く掃除しろよ」
俺が低い声で睨みながら言うと、みんな何かをつぶやきながらホウキを掴む。
「あれ? 汚いな」
リュックを背負った霧宮が教室の中に入る。
まるで『今学校に着いた人』のようだ。
「康輝、なんでこんな汚いんだ?」
「いつも皆嘉が掃除してるだろ? だけどいじめられて精神おかしくなっちまって保健室行った」
「ああ、じゃあ君たちのせいか」
霧宮は生徒たちを細い目で見ながら掃除し始める。
意外と演技力あるな……こいつ。
いつも本とか読んで陰キャみたいだけど……。
人は見た目で判断しちゃいけねぇな。
「! なにこれ!?」
「うわっ! きたなっ!」
今度は水麗と大雅が教室の中に入る。
こいつらもリュックを持っていて背負っている。
マジで演技力あるな……。
大雅とかめっちゃ下手そうなのに……。
「よし、やっと綺麗になったな」
十分くらいかけてやっと教室が綺麗になった。
ホコリぶち撒く前より綺麗な気がする……。
「あーあ、疲れた! 皆嘉が病んだせいで! 誰が皆嘉をそんなことにしたんだろうなー!」
大雅がわざとらしく大声を出す。
顔がめっちゃ怖い。
めっちゃ殺意がある。
大雅の表情を見て俺と水麗、霧宮以外の生徒が大雅から目を逸らす。
よし、今日やることはやった。
あとは明日からだな。
「へー、皆が大雅の顔を見てビクビクしてたのか。我も見たかった」
放課後、いつも通り美月が一組に遊びに来た。
今は皆嘉もいる。
「こんなことまで……ありがとう……」
皆嘉が微笑みながら俺に言う。
「いや、むしろこっちが礼を言いたいな」
大雅が机を叩きながら言う。
『バーン!』って音がなって、今にも壊れそうだ。
壊すなよ……?
「この作戦のおかけでホコリ殴りまくれたし」
……喧嘩バカはホコリを殴っても満足するらしい。
「おーい、下校時刻だぞー」
廊下から前崎先生が入ってきた。
今教室にいるのは俺たちだけだ。
「あ、悪い悪い」
大雅は先生にタメ口。
それでも先生は怒らない。
むしろ笑ってる。
「お前ら、ありがとな」
小声でそう言った。
「わかったらとっとと帰れ。もう下校時刻だぞ」
俺らは先生に『さよなら』って言って教室から出た。
「我も演技したかった……。しかし、康輝に『お前は皆嘉と一緒にいてやれ』って言われて……。ちなみに皆嘉は保健室なんかに行ってないぞ? 教室の近くでずっと待ってた。ではクイズだ! 『部活を決めるとき、水麗は〇〇部はいいや、と言っていたが、それは何部?』。 意味深な言葉だ……」




