第70話 皆嘉と大雅の喧嘩
「前回のクイズの答えは『いい胸してるね!』だ!」
「じゃあ行くぜ!」
大雅が皆嘉に向かって走る。
やっぱり速いな……。
皆嘉は動かない。
大雅が皆嘉を殴ろうとする。
……これ皆嘉殴られるな。
そう思って見ていた。
しかし、俺が思っていたこととは違うことが起こった。
皆嘉が大雅の拳をとめた。
皆嘉はそのまま大雅の腹を蹴る。
「……すげぇ……」
俺は思わず声に出す。
隣で美月が微笑みながら俺の顔を見る。
「……へー! すげぇじゃん!」
大雅は殴られてるにも関わらず、笑う。
戦闘狂……
「まだ続けるぜ!」
「え! まだ!?」
大雅は皆嘉の腹を殴ろうとする。
皆嘉は急いで防ごうとする。
しかし大雅は腹の寸前で拳をとめ、皆嘉の顔面に頭突きする。
そのまま大雅は皆嘉の腹を蹴る。
皆嘉はタイミングを見つけ、大雅の足を掴む。
そして大雅の足を引く。
大雅の足が地面から離れる。
皆嘉は大雅を勢いよく地面に叩きつける。
「……もういいんじゃないか?」
俺が二人の近くに行く。
二人とも全然息切らしてない。
「おおー! お前いいな!」
大雅が立ち上がり、皆嘉の肩を叩く。
何が『いい』んだろう……?
「……で、話戻る。これから皆嘉には色々なことをしてもらう。詳しくは学校で話す。行こうぜ」
俺が歩き始めると、みんなついてくる。
水麗がさっきから無言だ。
皆嘉と仲良くしてほしいな……。
「……! 康輝!」
美月が俺の隣まで走る。
手には俺が昨日渡した赤色のヘアピンがある。
「これ、返し忘れてた。すまぬ」
「え、あ、ああ、ありがとな。てか『明日返せ』って言ったから謝らなくてもいいと思うぞ?」
「……何してるの……?」
やっと水麗が喋る。
「いや、昨日渡したものを返してもらってただけだ」
「……そっか……」
水麗がさらに元気なくした気がする……。
俺のせいじゃないよね?
てかなんで元気なくしたの……?
「学校着いたし、早く言えよ」
教室に着いた。
これまでの間、みんな無言だった。
そして今、大雅がやっと喋った。
美月は二組だが、そのまま一組に来てくれた。
「よし、じゃあ話す。みんな、ロッカーの上って汚いと思うか?」
俺は外にあるロッカーを指して言う。
まぁまぁ高い。
「まぁ、汚いんじゃねぇか?」
「よし、その上にあるホコリとかゴミを集めるぞ」
「……何をするつもりだ?」
「そのゴミを教室にぶちまく」
俺の発言にみんなが驚く。
誰も教室にいない今しかできない。
「あとは俺に任せろ。とりあえず行くぞ」
俺はリュックをおろし、廊下に出ようとした。
「へー、そんなことを考えてるのか」
俺の後ろから声。
急いで振り向くと、そこにはメガネの男子生徒がいた。
こいつ……!
俺が最初、席間違えたときにいたやつ!
「そこ、僕の席です」
あのときのこいつのセリフが頭に浮かぶ。
クソ……バレちまった……
そう思って俺は、その男子生徒を見ていた。
すると、その男子生徒は喋った。
「面白そうだな、僕も混ぜてよ」
「みな、あのメガネの陰キャっぽいやつ覚えておるか? 忘れたものは第6話を見てくれ。ではクイズだ! 『夏祭り、大雅は射的で何を当てた?』。我もほしい……」




