第64話 皆嘉発見
「前回のクイズの解答例だ! 『康輝は少し真面目で優しい、水麗は元気でたまにふざける、大雅は喧嘩バカ、美月は口調変えてて意外と優しい生物オタク』……。我のだけ少し酷い気がする……」
「! 皆嘉!」
美月が校門に向かって手を振る。
そこには新坂がいた。
「あ、おはよ……」
新坂は俺をチラチラ見ながら美月に近づく。
俺がいることを不思議に思っているのか……
「えっと……なんで橋本康輝が……」
「お主、言いたいことがあるのだろう? 昨日言っていたではないか」
言いたいこと……愛の告白?
……こんなときにふざけてんじゃねぇよ……俺……
「……今言うのか……?」
「その方が良いだろ? 今日はお主の味方だ」
「……康輝……この前は……急に殴ったりして悪かった……」
急に殴った……?
そんなことあったっけ……
……いや、あったな。
今思い出した。
なんで俺が忘れてるんだよ……
「え、あ、ああ、大丈夫だ。それよりも美月との関係を教えてほしい……」
俺が言いかけているときだった。
新坂の握っているスマホが震える。
電話か……?
「あ、悪い」
新坂はスマホを耳に当てる。
「今学校だから電話かけるな」
『私も学校だよ!』
「じゃあもっとダメだろ……」
スマホから声がもれる。
女の声……
『皆嘉の声聞きたかったの!』
「俺はお前の夫かよ」
すげぇ……俺と水麗のやりとりみたいだ……!
めっちゃ似てる。
「もう切るぞ?」
『えー……』
「じゃあな」
新坂がスマホの画面をタップする。
電話切りやがった。
「……あ、今のは気にしないで。それで、なんか言いたいことあったんだろ?」
「あ、ああ。美月との関係……」
「それはあとで話す」
なんでみんな『あとで話す』とか『今度話す』とか言うの?
今じゃダメなの?
そろそろ悲しくなってきた。
「……それとさ、どこまで言っていいんだ?」
「どこまで……?」
「いじめられてることだよ。言い過ぎるとお前の精神死ぬだろ?」
「どこまでもどうぞ」
よし、これで今日は俺の勝ちだな。
何言ってもいいなら。
「康輝、皆嘉がいじめられた理由を知らなくてよいのか?」
「ああ、知らない方がいい。ま、なんとなく予想はできてるけど」
「ほう、どんなことを考えておる?」
「『皆嘉が俺を殴ったから』じゃないのか?」
「半分正解」
美月のかわりに皆嘉が答える。
半分……?
「あとで話す。それより、殴って本当に悪かった」
「だからもういいって。どちらかというと俺は、お前が美月を蹴ったことに怒ったからな」
「でも痛かっただろ? 力の加減ができなくて……」
……確かに最初皆嘉に殴られたときは痛かったな。
でも俺と喧嘩してるときはそんなに強くなかった。
いや、弱かった。
俺が痛いと感じるほどの殴りができるなら、もうちょっと強くてもよかったんじゃないか?
……これもあとで訊いてみるか。
「久しぶりの投稿だ! そして次回から……! じゃあいつも通りクイズを出すぞ。『美月はポケットナイフをどこのポケットに入れてる?』。これは難しいな……」




