第63話 新学期
「前回のクイズの答えは『魚』だ。……もうバーベキューはヤダ……」
九月一日
始業式の日だ。
そして俺と美月にとってかなり大事な日だ。
だから俺はいつもより早く家から出た。
家を出ると目と前に美月がいた。
「おはよ」
地声で話しかけてくる。
いつもならツッコミを入れていたと思うが、今日はその気になれない。
「ああ、皆嘉は一緒じゃねぇのか?」
「うん、なんか知らないけど私たちと行きたくないんだって」
よっぽどストレス溜まってるのか……
つらいときって一人になりたいもんな……
「ほら、今写真送ってくれた。まだ家みたい」
美月が俺にスマホの画面を見せる。
それには、鮭の塩焼きが映っていた。
その隣にはブイサインをしている男……新坂皆嘉がいた。
めっちゃ笑顔……
「……元気そうだな……」
「うん、昨日一緒に動物園行ったけど、すっごく楽しそうだった」
昨日行ったのか……
俺昨日何したっけ……
水麗と勉強した気がする……
「……それと美月」
俺はポケットに手を入れ、中から赤色のヘアピンを一つ出す。
「これ、持っておけ」
「? なにこれ」
「御守だ。何か責められたらこれを握れ」
俺は美月そのヘアピンを美月に手渡す。
美月はそれを持ち、調べるように見つめる。
「ありかとう……でもさ、これ私が持ってていいやつなの? 康輝のじゃ……」
「俺は大丈夫だ。これがあるから」
俺はもう片方のポケットから赤色の栞を出す。
俺にとってかなり大事なものだ。
「うん……」
「……あ、でも明日には返してほしい」
「そのつもりだよ。でも、今度焼きそばつくってね。私も食べたい」
「まだ言ってんのかよ……」
どれだけ根に持ってるんだよ……
俺のつくった焼きそばなんて、夏祭りの焼きそばよりまずいと思うぞ……?
「じゃあ行くぜ」
「いつ言うつもりなの?」
美月が俺に訊く。
今はもう学校の中。
ここまで来る間、俺たちは何も喋らなかった。
俺が喋らない空気を出してたから、美月が気を使って話さなかったのだろう。
「終礼に言う。……お前も来るか?」
「当たり前じゃん、言いたいことたくさんあるし」
「皆嘉にとってはいきなりで逆につらくさせちまうと思うけど、我慢してもらうしかないな」
「そこのところは気にしなくて大丈夫」
美月が自信満々で言う。
ちょっと笑ってる。
「皆嘉が『ありがとう』って言ってたよ」
「流石美月。そんなことまでしてるのか」
「皆嘉のためだもん。なんでもするよ」
美月はそのまま歩く。
しかし俺は歩かなかった。
歩けなかったからだ。
『康輝のためだもん! なんでもするよ!』
頭の中に響く声。
このタイミングで……
味方になってくれよ……お前が恨んでる『いじめ』と戦うんだから。
「とうとうクライマックス……なんだが……作者が多忙なため、今週は投稿できない。で、でも! 今回はいつもとちょっと違うクイズ考えたから! 『康輝、水麗、大雅、美月にはそれぞれ個性がある。答えよ』。それと、なんか質問があったら答えられるものは答えられるから、何かあったら感想から送って! だから許して!」




