第59話 夏祭り 〜迷子の子〜
「前回のクイズの答えは『陸上部』だ! 大雅に似合う……?」
「ここまでママと一緒にいたの?」
俺は女の子を背負いながら言う。
かき氷屋まで来たけど、この子の母親らしき人はいない。
「うん」
「迷子になったとき、どこで待ち合わせするとか聞いてない?」
「……うん……」
マジか……こういうところって迷子センターみたいなところあるかな……?
それなら放送とかできるんだけど……
……そうだ、思いついた。
最近の子ってさ、親から電話番号とか書かれた紙を渡されたりするよね?
もしかしたら持ってるかも……
「ねぇねぇ、ママから何か紙とかもらってない? 文字とか番号とかいっぱい書いてある紙」
「もらってない……」
「うーん……ママってどういう人? 髪の色とか、服とか教えてほしいな」
「髪は黒くて、服は私みたいな服着てた」
髪は黒い……そして服はこの子と同じようなやつ……
この子は浴衣着てるから、浴衣着てるのかな……?
「なんでママとわかれちゃったかわかる?」
「ママがかき氷買ってくれようとして、順番待ってたの。そしたら知らないお兄さんたちがいっぱい押してきたの」
……えーと……どういうことだ……?
まずかき氷屋で順番を待っていた。
そしたら団体の若い男が歩いてきた。
それに押されてわかれたのかな……?
そのとき、『グーッ』って音がする。
女の子の腹からきこえた。
「お腹空いた?」
「うん」
「……焼きそば食べる?」
「いいの……?」
「うん。じゃ、行こっか」
俺は今度は焼きそば屋に向かう。
水麗と美月と会えるかな……?
焼きそば屋に着いたけど、水麗たちの姿はない。
あいつら、どこ行ったんだ……?
電話しよっかな……
この子が焼きそば食べてるときでいっか。
俺はとりあえず焼きそばを買い、それと箸を持って近くのベンチに向かう。
女の子をそこに座らせて焼きそばをあげる。
めっちゃ美味そうに食う。
さてと、俺は水麗に電話かけるか。
「……あ、水麗? 今どこにいる?」
『え? かき氷屋さんだけど……』
すれ違ったか……
「マジか……美月も一緒だよな?」
『うん、なんかナンパされてるよ、美月ちゃん』
「は? ナンパって……?」
美月がナンパ……?
そんなこと……いや、されるな。
「なんでナンパされたかわかるか?」
『美月ちゃんが急に可愛くて高い声出したら、知らないおじさんがいっぱい来て……』
やっぱり。
あいつ地声出しやがったな……
さっき『康輝の前でしか地声出さない』みたいなこと言ってなかったっけ?
いや、『俺の前では地声の方がいい』だった気がする。
……こんなこと考えてる場合じゃなかった。
早く見つけなきゃな。
「なぜ我は地声を……康輝の前でしか出すつもりはなかったのに……そんなことよりクイズ! 『水麗が康輝と期末テストの勉強をしたとき、二人はとある飲み物を飲んだ。その飲み物は?』。急に難しくなりすぎてる……」




