第53話 罠 ~大雅、美月~
「前回のクイズの答えは『六回』だ。……本当にかわいそう……」
「大雅!」
美月が大雅に近づいて言う。
大雅はその声を聞き、振り向く。
「なっ! 美月! なんで来るんだよ!」
「お主を一人にはできぬ。危なすぎる」
「なんでだよ! 俺のことどう思ってんだ!」
「いいから……康輝のところに帰るぞ」
美月は大雅の腕を掴み、戻ろうとした。
しかし、それはできなかった。
二人の前に、敵が二人いたのだ。
「自分から罠に入ってくるなんて。バカなやつだ」
敵の一人が、小バカにするような言い方で大雅に言う。
大雅はそれを聞いて嬉しそうな顔をする。
「俺はバカじゃねぇぜ。罠ってことくらいわかってた。でもな、お前らと戦えると思って来たんだよ!」
大雅は叫び、敵に近づく。
敵は大雅に向けて何発も銃を撃つが、大雅は銃弾を全て躱す。
「大雅! これは喧嘩ではないぞ! 骨折とかダメだからな!」
「んなことわかってる! 粉砕骨折させるだけだ!」
「わかっておらぬではないか!」
美月も走り出す。
粉砕骨折。
骨を粉々にすることだ。
流石に美月も黙っていられなかった。
「銃を使えば相手を傷つけてもよいのだな?」
美月は自分自身にそう質問し、敵に銃を構える。
そして、大雅が撃つのを待った。
敵は美月よりも大雅に注目しており、大雅に向かって必死に撃っている。
大雅は楽しそうに銃弾を躱し、やっと銃を構える。
そして、敵の頭をめがけて撃った。
それと同時に、美月はその敵の脚を狙って撃った。
敵は大雅の攻撃を躱すためにしゃがむ。
しかし、そのせいで美月の攻撃は躱せなかった。
「しゃがんだまま高く跳ぶということはできない。そこのところを理解しておくことだな」
美月は敵に向かってそう言い放ち、敵に近づく。
そして敵から銃を奪い、腕を掴む。
次の瞬間、美月は四発撃った。
笛が鳴り、撃たれた敵はとぼとぼと歩く。
大雅は残りの一人の背中に回り込み、三発撃ち込む。
残りの二発は美月が撃ち、再び笛がなったなった。
「美月、お前結構強ぇじゃねぇか。どうだ? 今度俺と喧嘩するか?」
「断る。お主のような者と喧嘩などしたくない」
「……どういう意味だ? それ」
「わからぬならわからぬままでよい」
美月はそう言い、歩き始めた。
「―――それともう一つ言いたいことがある」
美月はゆっくりと振り向き、大雅の目を見る。
大雅は不思議そうに美月を見る。
「私ね、好きって感情に気づくの遅いんだ」
美月が地声で言った。
しかし、大雅はそのことよりも美月の言った言葉の意味を考えていた。
「冗談だ。興奮したか?」
美月は笑い、再び歩き出した。
「今回は我、結構強かったろ? 敵の銃は奪ってよいんだよな……? まぁ、笛とか鳴らなかったし多分大丈夫だろ。ではクイズだ! 『室井美月は中学のとき何されていた? ①いじめ、②ストーカー、③暴力』。……こういうさ、人の嫌なことを思い出させるような問題良くないと思うんだよね、私」




