第51話 敵陣地に行ったけど……
「前回クイズの答えは『三』だ。大雅の行動……よくないな……」
「……全然いないな」
敵の陣地に行ったのに全然敵が現れない。
すれ違ったか、それとも俺たちの隙をうかがっているか。
多分待ち伏せしてるだろう。
どっちにしろ、いつでも銃弾避ける準備してれば大丈夫か。
「えーと……、康輝……。お主『銃弾避ければいいだろ』とか思っておるだろ」
美月が片手で銃を持ちながら俺に訊く。
余裕そうだな……。
「ああ、何か悪いか?」
「……大雅はまだいい。しかし、我と水麗はできぬからな? それを頭に入れておいてほしい」
「わかってる。最悪、お前が地声で『許してよ、大好きだから』って泣きながら言えば撃たれないと思うぞ?」
「ぜっっっったいに言わぬ」
美月は『フン!』って言って俺から目をそらす。
その『フン!』が地声だから結構かわいい。
そのとき、俺は後ろから気配を感じた。
後ろを見ると、敵の一人が俺に銃口を向けていた。
俺を撃とうとしているのか。
させねぇよ。
俺はすぐに相手に向かって銃を撃つ。
銃弾は俺の狙い通り、敵の持っている銃に当たる。
敵は銃を落とす。
やっぱ気持ちいいな……敵のあの顔。
めっちゃ驚いてた……
『あ! またそんな変なことを思ってる!』
本当によく出るよな、お前は。
今試合中だから静かにしてくれない?
『だから酷くない!?』
全然酷くないよ。
ってか、今芽依と話してる場合じゃない。
さっさとあいつ殺そ。
……いやこういうのは後ろからきてる……
後ろを見ると、もう一人の敵が俺たちに銃を構えていた。
同じだよ。
俺はそいつの握っている銃を狙って撃つ。
当然当たる。
「ほら、撃ち放題だぞ。撃ちまくれ」
俺が言うと大雅がそいつに向かって三発撃つ。
それは全て当たり、その敵は隠れる。
「お、お兄ちゃんすごい!」
「そうか?」
「ああ、俺でもできねぇぞ」
中学時代のときめっちゃ練習したなかな。
……確かに自分でも思うな。俺ってすげぇ。
そんなこと思いながら俺はリロードする。
「へー、慣れた手付きだな」
大雅が俺の手を見て言う。
「もう飽きたぜ。この作業」
「……我等はいつ康輝と話せるのか……」
「……うん、もう会話についていけないよ……」
美月と水麗がめっちゃ小声で言う。
聞こえてますよ……
「おい、あいつヤバいって!」
先刻、康輝に銃が撃たれた男が仲間に向かって言う。
「銃を撃ってきたぞ!」
「……確かに、今回は強敵がいるみたいだね」
リーダー的な男が考えながら言う。
今回の強敵―――康輝の対策を。
「……いいこと思いついた」
その男はそう言い、仲間に小声で言った。
「また地声出ちゃった……最近出ちゃうんだよね……康輝だけに聞かれるならまだいいけど……。……あ、クイズか……。『康輝のときに時々出てくる女の声は誰? 名前を言え』。書いてあるじゃん……今回に……」




