第5話 入学式で……
「わー、結構人いるね」
ここは楓野学園、俺たちが入学する高校だ。
桜が咲いていて、綺麗だ。
「じゃ、康輝たちとはここでお別れだね」
「ああ。またな」
俺と水麗は母さんたちとわかれる。
「体育館広っ!」
「お兄ちゃん、声でかいよ」
俺は体育館に入った瞬間に思わず声を上げる。
いや、だってここの体育館広すぎだろ。
「入学生は並べられている椅子にお座りください」
受付にいる先生が言う。
ああいうのって先生っていうんだよね……?
俺らはその人の言う通りに座る。
「……お兄ちゃん、かわいい子見つけた?」
「今そんなこと気にしてられねぇよ。てか、今会話してるの俺たちだけだぞ」
まぁ、当然だろう。
皆知り合いいないだろ。
「ほんとだ」
「な? だから静かに――」
「みなさーん! ここにイケメンがいますよー!」
水麗が手を挙げて急に大声を出す。
しかも、水麗は俺を指している。
「バッ! 何言ってる!」
俺はまた大声を出してしまう。
皆が……特に女子が俺に注目している。
「この人は橋本康輝って人でーす! マジでかっこいいので、話してみてくださーい!」
「やめろ! 父さんと母さんに見られたらどうすんだ!」
「もう見てるよ」
……え、嘘だろ……。
俺は体育館の後ろをを見る。
そこが保護者席になっているのだ。
今思ったけど、保護者と生徒を一緒に座らせないんだ……。
保護者席には父さんと母さんがいた。
そしてなぜか泣いている。
ってか座るの早くない……?
さっき別れたばっかりだよね……?
「あの子……みんなの前で大声出せるようになったなんて……」
「水麗も見習ってほしいな……」
父さんと母さんはそう言っていた。
「か、母さん! なんで『みんなの前で大声出せたら一人前』みたいに言ってるんだよ! ってかなんでそこで感動するんだよ! 俺のイメージがヤバくなるだろ!」
……やべ、俺も大声出しちまった。
みんなの痛い笑い声が……。
そこから先は、集中してなかった。
だから何も覚えていない。
唯一覚えている事は、校長の髪型がバーコードだったことだ。
「お兄ちゃん、結局かわいい子見つけた?」
「何も覚えてねぇよ」
俺の黒歴史がまた増えた。
どうしよう、明日教室に行ったら……。
ああ、明日よ、来ないでくれ。
面白い家族ですね。