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第45話 皆嘉の家

「前回のクイズの答えは『前崎衆人』だ。これは正答率低いだろ?」

 「はぁ……」


 ため息をついたのは新坂皆嘉。

 皆嘉は今、自分の部屋のベッドで横になっている。


 今頃康輝たちはバーベキューを終えて、帰っている。

 もちろん、皆嘉はそのことを知らない。


 「皆嘉! ご飯できたよ!」


 皆嘉がボーッとしていると、ドア越しに若い女の声が聞こえる。


 皆嘉はしぶしぶドアに近づき、ドアを開ける。

 そこには、エプロンをかけた十五歳くらいの女がいた。


 「あ、ああ……でも今日そんな食欲ねぇんだ」

 「は!? 私がせっかくつくったのに!?」

 「悪い……でもお前の料理美味いから少しは食うよ」

 「……嘘ばっかり……」


 女は顔を少し赤くし、小声で言う。


 「いつも俺のために色々としてくれてありがとな」


 皆嘉は女の頭を優しく撫でる。

 女はさらに顔を赤くし、目線を下に向ける。


 「……皆嘉、わからない問題、あるんだけど……」

 「学校のか?」

 「ち、違う! 学校のは簡単! 過去問だよ……」


 女は急いで自分の部屋に向かう。

 そして、とある冊子を持ってきた。


 表紙には『楓野学園 過去問題集』と書いてあった。


 「数学で……二次関数のグラフでできた三角形の回転体の面積を求めなきゃいけないんだけど……」

 「回転体か……俺もちょっと苦手だけどな……」

 「え……じゃあ……教えるの……無理……?」


 女は急に小声になる。


 「んな顔するな。時間かければ解けるよ、多分」

 「で、でも皆嘉の時間がなくなっちゃうし……」

 「あのな」


 皆嘉は少し腰を下げ、女と目を合わせる。

 女も皆嘉の目を見つめる。


 「お前は俺の妹みたいな存在だ。妹のために時間を潰さねぇ兄がどこにいるんだよ」

 「……同じクラスの井上はお兄ちゃんに全然優しくされないって」

 「……そういうのはな、今言うことじゃないだろ……」


 皆嘉はため息をつき、女から冊子を受け取る。

 そして付箋(ふせん)が貼ってあるページを開く。


 それには『皆嘉に教えてもらうとこ』と書いてあった。


 「これか?」

 「うん……」

 「……。……計算面倒臭いな……」


 皆嘉はそのページを見ながら言う。

 その言葉に女は反応する。


 「で、でも! ここ配点高いから!」

 「教えねぇとは言ってねぇだろ。ちょっと待ってろ」


 皆嘉は自分の机に向かい、シャーペンとノートを持ってくる。

 そして、それにグラフを書き始める。





 「……って感じだ」

 「……計算面倒臭いね」

 「ああ。……そろそろ夕飯食べたいけど……」

 「……ごめん、もう全部冷めてると思う」


 女の言葉に、辺りが凍てついたように固まった。

「康輝が出ない珍しい回だな。少しは皆嘉の人気度上がったか? ここでクイズだ! 『皆嘉が初めて康輝を殴ったき、皆嘉は誰と口論した?』。簡単すぎる!」

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