第40話 プールに行こう! 〜夜〜
前回のクイズの答えは『九番』だ。康輝が十一番だからな。
「あー、疲れた」
俺は腕を伸ばす。
もう夜の六時。
少しだけ暗くなっている。
「楽しかったな」
大雅が俺の肩に手を乗せる。
……まぁ、ジェットコースターとお化け屋敷以外は楽しかった。
遊園地のときと同じだ……
なんで心霊現象起こるんだ……
マジで呪われてるのか……?
「? お兄ちゃん、どうしたの?」
水麗が俺の顔を覗くように見ながら言う。
なんでこいつはホラーとか苦手なのに、そんなトラウマにならないんだ……?
普通、もっと顔色とか悪くなるだろ……
「お主、顔色悪いぞ?」
まぁ、普通顔色悪くなるだろ。
「……あ、お土産! 私見に行きたい!」
「あ、俺も!」
水麗と大雅がいきなり走り出す。
そんなにお土産ほしいのか……。
「……康輝、話したいことがあるんだけど」
美月が俺に地声で言う。
しかも真顔だから、かなり重要な話だろう。
新坂のことか……?
「ああ、なんだ?」
「皆嘉のことなんだけど」
やっぱりか……
……これを読んでる人たち、『皆嘉』って誰のことかわかるよね?
新坂の名前だよ?
「……どうした」
「まず謝りたいの……。……ごめん……」
美月は頭を下げる。
なんで美月が……
「私、ずっと皆嘉のこと知ってたんだ」
知ってた……
どういう意味だ……?
「康輝が皆嘉と喧嘩したときからずっと、仲良かったんだ」
「……? でも新坂はお前のこと蹴ってたぞ?」
「あれは私の演技。皆嘉は本当は私のことを蹴ってなかったなの」
……なんとなくわかった気がする……
「……ごめん、詳しくは皆嘉と三人のときに話したい」
「……わかった」
「それと、二学期の始業式に皆嘉のことでみんなに言うから……」
美月はここで、慌てて口を閉じる。
『康輝も一緒に言ってくれる?』と言いたかったのだろう。
今まで新坂と仲を俺に隠してたから、そんな願い聞いてくれないと思っているのだろう。
「俺も注意する」
俺が言うと、美月は目を大きくして俺を見る。
俺から言うとは思わなかったのだろう。
「始業式の日、先生に頼んで時間をもらう。そのときに一緒に言おう」
俺が言うと、美月の目で涙がたまる。
やがてそれは、大きな雫となり、美月の目から落ちる。
「ありがとう……!」
美月は小声で言う。
いつもの俺なら聞き取れなかっただろう。
しかし、今日は聞こえた。
新坂と美月にどういう関係があるかは知らないが、俺は決心した。
『新坂と美月を助ける』と。
「それと、夏休みの間はいつも通り振る舞ってくれ。他の奴らにバレたくない」
「……わかった」
美月は小さく頷く。
俺は自分でもわかっていた。
『なんで他の人にバレたくないの?』。
美月はそう思ったはずだ。
でも敢えて訊かなかったんだと思う。
……ありがとう、美月。
「康輝……。ありがとう……私……。……! ごめん! クイズ! コホン、では問題だ。『遊園地の帰りで我らは何ラーメンを食べた?』。あれはうまかったぞ!




