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第346話 打ち上げ 〜4〜

「前回のクイズの答えは『桃ラーメン』だ!」

 「あ、お兄ちゃん帰って来た!」


 店に入ると、早速聞こえる水麗の声。

 こいつらは元気そうだ。


 「あれー? 白斗と康輝くんが一緒なんて珍しいねー?」

 「君たちが見てないところだと結構一緒にいることが多いぞ」


 嘘だ。

 俺、あんまり白斗と二人きりにはならない。


 いつものなら軽くツッコミを入れてるけど、今は白斗のこの嘘がありがたく思えた。


 「で、まだ食べれるの?」

 「正直限界」

 「私もそろそろ限界」


 そりゃそうだな。

 俺よりも食べてるぞ、みんな。


 俺も運動部にすればよかったな、将棋部じゃなくて。


 「外、暑かった?」

 「いや、そんなに」

 「じゃあさ、また外でよ?」


 水麗は俺の手を握って立ち上がる。

 助けを求めるために白斗を見たけど、やっぱり助けはいらないみたいだ。


 白斗は少しだけ笑ってて、軽く口を動かした。


 『行ってこい』


 そんなふうに言ってる気がする。


 今は、俺を認めてくれる人もたくさんいる。

 だったらその人たちを大切にしなきゃいけない。


 「ちょっとだけだぞ?」

 「うん、わかってるよ」


 店を出ると、一気に静かになった。


 水麗はさっき俺たちが座ってた場所に座る。

 俺もその隣に座った。


 「楽しかったね、色々あったけど」

 「……そうだね、本当に色々あった」

 「来年からはこんなふうに行かないもんね。大学行く人は受験勉強しなきゃいけないし、クラスの雰囲気も重くなるよね、勉強のストレスで」


 そうだ、もう今年の学園祭みたいに、楽しくできない。

 みんな勉強で忙しくなる。


 これが最後だった。


 「お兄ちゃんはさ、大学行こうとしてる?」

 「考えてないな。俺は高校卒業して、そのまま働くつもり」

 「そっかー……。お金がほしいから?」

 「そうだな、ちょっと言い方酷いけど」


 俺は母さんに返さなきゃいけない。

 俺は母さんと――父さんのお金でここまで育った。


 俺には二人の父さんがいる。

 その二人にも、返さなきゃ。


 3人はそれを否定するかもしれない。

 だけどいいんだ。


 俺はそう決めたんだ――。






 「――なにしてんだ? あいつら」


 康輝と水麗が出て行ってから数分後、大雅が店の外を見てそう言った。


 「ちょっと見てくるわ」

 「待って」


 それを止めたのは冬乃。


 「なんで?」

 「兄妹だけの話とかあるよ。そういうとこ、考えなきゃだよ?」


 大雅は冬乃の言っていることがわからないという表情を浮かべる。


 冬乃はそれを見て笑った。


 白斗はそんな冬乃を見る。


 冬乃もそれに気づき、白斗と目を合わせた。


 そして、表情を変えないまま人差し指を口に近づけた。


 「……本当に理解が追いつかないよ、君には」


 白斗はため息をつき、メガネを外した。

「まず一つ。なんか冬乃とかだけ出番多くない!? いや、我も昔は結構出番あったけど! ってか、なぜ我と大雅を出さない!? 作者め……! くだらないクイズを毎回出す暇あったら我の出番を増やせ……! ……ではクイズだ! 『美月が護身用に持ち歩いているものはなに?』。クイズで我のことを出しても意味がないであろう!」

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