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第345話 打ち上げ 〜3〜

「前回のクイズの答えは『ラーメン』だ!」

 俺は自分自身を見失っていた気がする。

 中学時代に、俺にとって最悪なことが起こったからだ。


 そう、それが原因だった。


 自分が世界にとって不要な存在だと気づいた。

 そこから俺は学校に行くのが怖くなった。


 いつも話してたやつとは話さなくなって、ずっと独りだった。


 今でも思い出せる。

 日常が完全に変わった、あの瞬間を。


 あの瞬間を境に、俺も変わった。


 学校で笑うことはなくなった気がする。

 校則も無視し始めた。


 どうでもよかったから。


 学校に行くと、そのうち暴力も振るわれるようになった。

 帰り道、昔の不良みたいに路地裏に呼ばれて。


 そこで何回も殴られた。


 うちの学校はあんまり民度がよくないから、平気でそういうことをするやつがたくさんいた。


 ずっと殴られてるうちに、だんだん俺も反撃ができるようになってきた。


 そのうちに、勝手に喧嘩が強くなっていった。


 もちろん、みんなからも、先生からも問題児扱いされた。

 学校行事も積極的に休んだ。


 だけど、そんな俺でも認めてくれてた人がいた。


 榎本芽依。


 それが彼女の名前だった。


 そいつだけは、俺に優しく接してくれた。

 まるで俺が、普通の男子中学生かのように接してくれた。


 それだけで嬉しかった。


 逆にそれがあったから、俺はたまに学校へ行けた。


 正直、好きだった。

 気づいたら芽依の姿をさがしてる自分がいたんだ。


 そのときに芽依は必ず目を合わせてくれて、笑顔で返してくれた。


 この気持ちを伝えようとしたけど、それじゃ芽依に迷惑がかかると思った。

 いじめられてるやつに好かれてるなんて、学校でなにを言われるかわからない。


 でも、逆に芽依が自分の気持ちを伝えてくれた。


 『好きだからずっと一緒にいてほしい』


 嬉しかった。


 嬉しすぎて泣いて、芽依に心配されたことを今でも覚えてる。


 芽依がいるから、中学3年生――最後の学園祭も楽しめるかと思った。


 けれど、行っただけ無駄だった。


 芽依以外に認めてくれる人はいない。

 だから、帰ることにした。


 学園祭、本当は出たかった。


 みんなで一緒に、なにかをやりたかった。


 どんなふうに始まるんだろう?

 どんなお客さんが来るんだろう?

 どんな感じに終わるんだろう?

 終わったら、どんなふうにみんなで打ち上げ行くんだろう?


 それが、ずっと知りたかった――。






 「――だから、……意外と普通だって気づいた」

 

 全部話せた。

 芽依の……最期以外は。


 でも話す必要もない。

 話したところで、芽依はもうここに来ない。


 「そうか……。だが、認めてくれた人もいるんだろう? 今でもその人に会わないのか?」


 わかってた、その質問が来ることは。


 答える覚悟もできている。


 「もう……会えなくなっちゃった……」


 嘘は言ってない。


 「……わかった。その話、ありがとう。それじゃ、さっさと涙拭って。君の妹には見せたくないんだろう?」

 「……そうだな」


 今気づいた。

 俺が泣いているということに。


 やっぱりお前のこと思い出すと、泣いちゃうよ、芽依。

「なるほど……康輝は自分から喧嘩が強くなったのではなく、勝手にだんだん強くなっていったのか……。そう思うと、今までの我の言葉がひどく見えるな……。……じゃあ大雅は? ……ではクイズだ! 『冬乃が好きなラーメンは、自称何ラーメン?』。……?」

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