第343話 打ち上げ 〜1〜
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
うん、想像はできてた。
ここに来るってことは。
今どこにいるかって?
冬乃の店。
ここで打ち上げやるらしい。
さっきの冬乃の『お金はいらないし場所も用意しとくから』みたいな発言でなんとなくはわかってた。
でもこれだけは予想できなかった。
「冬乃ちゃん! こんなに用意してくれたんだね!」
「うん! さっきお父さんに頼んだんだー!」
「これ全部さっきつくったやつなの?」
「らしいよ!」
水麗は興奮してるみたいだし、冬乃もこれが普通だと思ってるっぽい。
「……なぁ、冬乃……今日って開店記念日とかじゃないよね?」
「うちの開店記念日は5月30日だよー?」
「じゃあなんで――」
俺は店の中を見渡して、自分の目がおかしくないことを確認する。
「こんなに豪華なの?」
そう、なぜだか知らないけど店内がめっちゃすごいことになってる。
そこら中に風船があるし、天井には筆で『お疲れ様! 大歓迎! 全部無料! めっちゃ食え!』って書かれた大きい紙が貼ってある。
「いやー、打ち上げってパーって豪華にやりたいじゃん?」
「……キミは本当に大丈夫なのか?」
白斗も珍しく困惑してるっぽい。
まぁ、そりゃそうだよな。
これがさ、俺たちの貸切とかだったら『ありがとー! 冬乃ー!』とかなるけど、別にそういうわけじゃないから。
普通のお客さんいっぱいいるから。
迷惑すぎない? たかが10人もいない高校生のためにこんな風船まき散らすの。
冬乃の親がやったことっぽいからなんとも言えないけど。
困惑してないのは冬乃と大雅と水麗くらいだよ。
「……あの、桃山先輩、全部無料って書いてますけど……」
「うん! 全部無料にしてくれるって! ラーメンでも炒め物でもドリンクでも!」
「これ……私たちだけですよね……?」
「そりゃね? 娘の友達も無料にしてくれるなんて、なんて良い親を持ったんだろ、私!」
「これ……他のお客さん誤解してしまいますよね……?」
海波の言ってることが正しいと思う。
俺だったら絶対に勘違いする。
「大丈夫! このお店に来る人、そういうことわかってるから」
「……すみません、どういう意味ですか?」
「今店内に常連さんしかいないんだよ。だからわかってくれるはず」
そんなわかるもんかね……。
ってか、みんな常連さんなのすごいな。
本当に常連さんかな……?
「……あ、斎藤さんだ! おーい、斎藤さーん!」
冬乃が突然、カウンター席に座ってる一人のお客さんに手を振る。
「おー、冬乃ちゃん! 友達と一緒で元気そうだなー!」
そのお客さんも手を振り返す。
……やっぱ冬乃、すごいな。
「……気づいたか? 困惑してないのは冬乃と水麗と……大雅もいるってことに! なんで困惑してないの!? もしかして、3人にとってはこれが普通!? ……落ち着いてきたところでクイズ。『冬乃の家は、テレビに出たことがある。◯か✕か』。テレビってすごくない?」




