第342話 学園祭二日目 〜10〜
「前回のクイズの答えは『◯』だ!」
「あ、橋本くーん!」
学園祭も終わりに近づいてきて、だいぶお客さんが減ってきた。
うちのところなんて誰も並んでない。
……他のどの教室も、誰も並んでないけど。
並んでるのは模擬店だけ。
食べ物とか飲み物を売ってるところね?
そこだけ並んでる。
うちももうお客さんは来ないな。
だから教室の前で『暇だなー』って思ってたら、誰かが俺に話しかけてきた。
昨日俺たちと一緒に仕事を全うした女子生徒だ。
水麗と一緒にクラスのみんなに怒った人ね?
「橋本くんってさ、打ち上げ参加する? クラスのだいたいの人が参加するやつ」
打ち上げ、ね……。
みんなが参加する打ち上げは参加しませんよ。
「いや、ちょっと予定とかがあって……」
「あー、そっか……。そういうときもあるよね。じゃあまたの機会だね!」
女子生徒は少しだけ残念そうに笑って、他のところに走っていった。
今、俺はとても嬉しい気持ちです。
俺を打ち上げに誘ってくれたよ?
他のみんなは俺を誘わなかったのに、あの人だけ誘ってくれたよ?
ヤバい、あの人好きになりそう。
「――へー、『あの人好きになりそう』ね……」
「ぬおっ!?」
突然後ろから聞こえた声に驚いて、変な声が出ちゃった。
振り向くとそこに白い目で俺を見下すように見てる水麗が。
「お兄ちゃん、あの子が好きなんだ」
「いや、『好き』っていうのはあれね!? 『友達として』ね!? ってか、なんで俺の心読めたんだよ!? もしかして俺、口に出してた!?」
「お兄ちゃんの考えてることならだいたいわかるよ」
え、怖いよ、それ。
これからは水麗の前で変なこと考えないようにしよ。
……別にこれも変なことではないけどね?
「で、なんでお前がこんなところに?」
「みんな、参加オッケーだって」
「……白斗もか?」
「白斗も」
よし、みんなオッケーみたいだ。
俺はみんなが参加する打ち上げには参加しない。
だけどさっき水麗が考えた打ち上げには参加することにした。
その打ち上げは、いつも俺が仲良くしてるやつらだけの打ち上げ。
水麗とか大雅、美月とか。
それならそこまで大人数じゃないし、変に疲れることもない。
場所は冬乃が考えてくれるらしい。
『みんな! お金はいらないから!』って言ってたからなんとなく予想できるけど。
この打ち上げは結構楽しみ。
あと1時間くらいか……、学園祭終わるの。
あとはボーッとして過ごすか。
「打ち上げだー! いつも仲良くしてるメンツだけでも楽しいよなー! ではクイズだ! 『康輝は過去に、高校の行事で打ち上げに行ったことがある。◯か✕か』。他にも打ち上げ、ね……」




