第341話 学園祭二日目 〜9〜
「前回のクイズの答えは『先生』だ!」
今俺たちは休憩所ってところにいる。
いつも使わないような教室を開けて、そこを休憩スペースにした感じのところ。
めっちゃ椅子が並べられてる。
校内は飲食禁止になってるけど、ここなら食べたり飲んだりしても大丈夫。
さっき水麗と模擬店で焼きそば買ったから、ここで食べることにした。
休憩所には他に誰もいなかったから、俺たちは真ん中に座った。
「いい話だったよね! お父さんもあんないいこと言えるんだ!」
「……そだね」
とりあえず否定はしないでおこう。
あのあと父さんは逃げるように学校から出ていった。
『なにしに来たの?』って思ったけど、水麗はそう思ってなさそうだから、敢えて言ってない。
「ん! 美味しいよ!」
早速焼きそばを食べてる水麗。
父さんの話聞いてご機嫌なようだ。
俺もずっと手に持ってるわけにはいかないから食べるか、焼きそば。
割り箸を割って俺も口に焼きそばを入れた。
『屋台の味!』って感じがして美味しい。
家でつくるような焼きそばと、カップ焼きそばと、屋台の焼きそばって全然違うよね?
「? どうした? さっきから全然喋ってないけど。考え事?」
「いや、なんでもない」
「そういえばお兄ちゃんも焼きそばつくってくれたことあったよね? いつだっけ?」
「……バーベキューのときだな」
「あ、そっか、あのときか。確か美月ちゃんが食べれなかったんだよね」
「あー……、そんなこととあったな……」
「大雅が『遅めの誕生日プレゼント!』って言って、お兄ちゃんに炭投げてたよね?」
「よく覚えてるな」
「お兄ちゃんとの思い出は基本的になんでも覚えてるよ?」
え、すご。
もう1年半一緒に過ごしてるけど、俺は全部は覚えてないよ? 水麗との思い出。
「それとさ、お兄ちゃんって今日の打ち上げ行く予定? クラスのほとんどの人が参加するけど」
打ち上げ?
そんなのあるの?
俺知らないんだけど。
ってか誘われてないんだけど。
なんか一気に虚しくなってきた。
いや、別に誰かが悪いわけじゃないよ?
俺を誘うのを忘れてただけだもんね?
誰でも忘れることはあるし。
――そう思いたいよ? 俺は。
俺、いじめられてるわけじゃない……だろうし。
話戻るけど、誰も悪くない。
誰も悪くないけど、ここに一人だけ傷ついた人がいる。
「行かない予定?」
「……うん、行かない予定。いきなり俺が参加するってなったら混乱するだろ。それに、クラスのほぼ全員が一気に店に行くのは、店側も迷惑だろうし」
「確かに、予約してないって感じだったもんね」
「だから俺は不参加」
「……時間は空いてるの? あとお金は持ってる?」
「時間は空いてるし、お金は持ってるけど……。大勢のクラスメートと行きたくないだけ」
「じゃあ私たちだけで行こっか」
はい?
二人で打ち上げ?
いや、別にいいけど――
「打ち上げなー! クラスのみんなでねー! しかも予約なしでねー! 店も混乱するだろうな……。ではクイズだ! 『康輝は焼きそばをつくって食べたことがあるが、前崎先生のつくった男飯も食べたことがある。◯か✕か』。男飯……」




