第340話 学園祭二日目 〜8〜
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
「ヤバい……吐きそう……」
校舎の外にあるベンチに座りながら、水麗は口を手でおさえてる。
これは本当に吐きそうなんだな、こいつ。
俺もさっきまで疲れで吐きそうだったけど、だいぶ回復してきた。
「お兄ちゃん……これヤバいよ……」
「保健室行く?」
「いや、あそこのおばさん怖いからいい……」
へー、保健室のおばさん、怖いんだ。
会ったことないからわからない。
「袋持ってくる?」
「ヤダ……離れないでほしい……」
なんでだよ。
離れてもなんも影響しないでしょ。
だったら冬乃とかに連絡して持ってきてもらおっかな?
「康輝くーん! 水麗ー!」
屋から声がする。
めちゃくちゃ聞き覚えあると思ったら、父さんがこっちに向かってきてた。
「来ちゃった」
「お父さん……」
「? 水麗? なんかすんごい顔してるけど大丈夫?」
「父さん、『具合悪そうな顔』って言ってあげて」
「お化け屋敷入って吐きそうになった……」
「お化け屋敷!?」
父さんの唐突な大声で一瞬だけびっくりした。
父さんが叫ぶとこ、初めて見た気がする。
叫んだあとには、爆笑してる父さん。
「ちょっ、なにやってるの……! み、水麗が、お、お化け屋敷……!」
笑わないであげてよ、父さん。
確かに『ホラー苦手ならお化け屋敷に行くな』ってのはちょっと共感できるけど。
まぁ、こういう場だしね。
せっかくだし行きたくなるのもわかる。
「ちょっ、お父さん! そんなに笑わないでよ!」
「ご、ごめん……! だって……『一人でお風呂入るの怖いー!』って泣いてた水麗が……!」
え、そうなの?
一人でお風呂入るの、怖かったんだな……。
「ねぇ! やめてよ! 恥ずかしい! ってか、それいつの話!? 私5歳くらいのときだよね!?」
「父親はね、そういうのをちゃんと覚えてるもんなんだよ」
急に真面目な顔になった父さん。
声も真面目だ。
そこからなにかを読み取って、水麗も真剣な表情になる。
「いいかい? 康輝くんもよく聞くんだよ? 子どもはね、親のことが嫌いになる時期があるんだ。昔のことなんて忘れてね」
え、なにこれ。
なんでこんな真面目な話が今ここで?
「でも、子どもはいつか気づくんだ。親の大切さに。今は水麗は親のことをあまり好きに思ってないかもしれない。でもそれが違うといつか気づく。そう気づくのは早くなくてもいい。自分のペースでいいから、そう気づきなさい。それが子どもが最後に経験する、『成長』なんだ」
え、これって感動シーン?
「お父さん……! ……うん、そうだよね。お父さんがいるから、今の私がいる。だから……嫌いにならないよ!」
さっきまで怒ってたのに、今はニッコリしてる水麗。
俺はどう反応すればいいかわからない。
「……よし、これで怒られなくて済む」
そうつぶやく父さん。
……なるほど、怒られるの嫌だから話を逸らしたのか。
……なんかちょっと残念な気がする。
「……なんだ、あの会話。水麗も簡単に騙されたな。ではクイズだ! 『康輝と水麗の父親は、笹川柚子からなんと呼ばれていた?』。これも難しいな……」
ここから作者の言葉です。
(無事に)テストが終わりました……。ご協力ありがとうございました……。そして、昨日の火曜日は投稿できずすみませんでした。




