第338話 学園祭二日目 〜6〜
「前回のクイズの答えは『康輝』だ! 男子のほうが出席番号が先って知っていれば簡単だな!」
教室の中の構造はよくあるお化け屋敷と同じっぽい。
ダンボールの壁があって、迷路みたいになってる。
ただ、他のお化け屋敷と違うのは、置物とかが大きいこと。
他のところのお化け屋敷にも日本人形とかフランス人形、ガラクタとかはある。
でもここのやつはとにかく大きい。
人形とかマネキンみたいだもん。
一人くらいならそのかげに隠れることができそう。
そういえばここのコンセプトは『幽霊に見つからないこと』だったな。
だからこんなに隠れられそうなやつがあるのか。
「お兄ちゃん……なんで懐中電灯ないの……?」
超小声で隣から訊いてくる水麗。
確かに懐中電灯の支給はなかった。
「自力で進めってことだろ」
「うぅ……想像してたやつと違う……」
まぁ、他のところはみんな懐中電灯を渡してるからな。
これはこれで新鮮だから楽しめそうだけど。
「先、進んでみよっか。ずっとここにいても――」
「――誰カ居ルノカ!?」
屋から聞こえる化け物みたいな声。
多分幽霊だ。
『ドンドンドン!』ってこっちに向かって走ってくる音が聞こえる。
「ちょっ、お兄ちゃん、ヤバイよ!」
そんな大声出すなよ……。
「とにかく、隠れるぞ。俺はそこのマネキンに隠れるから、お前はそこに金庫みたいなとこに隠れろ」
さっきのマネキンの近くには、めちゃくちゃデカい金庫もある。
そこも隠れることができそうだ。
「え、一人!? 離れちゃうの!?」
「さすがに同じ場所に二人は隠れられない。マネキンより金庫のほうがマシだろ?」
「……うん……」
水麗が金庫裏に隠れたことを確認してから、俺もマネキンの後ろに隠れる。
光が少ないからあんまりよく見えないけど、誰かが俺に近づいてきてるのはわかる。
そいつは化け物みたいに変な歩き方してる。
「……ドコ……行ッタ……?」
化け物はそんなことを言ってからもと来た道を戻ってく。
そこからある程度時間が経ってから俺は水麗のところまで言った。
水麗はうずくまりながらガタガタ震えてる。
「水麗、もう大丈夫」
「お兄ちゃん……?」
顔を上げる水麗。
半泣きだ。
「怖かったよ……」
「大丈夫、もうどっか行ったから。それじゃ、進むぞ」
「え、進んじゃうの!? あんな化け物がいる道を進んじゃうの!?」
大声出すなって。
ってか、進む以外に道はないだろ。
「また隠れるところはきっとあるから。化け物が出てきたら隠れればいい」
「……信じるからね」
いや、そこまで言われると自信なくなるよ。
俺だって予言者じゃないんだから。
でも進むしかない。
俺は震えてる水麗の手を握って歩き出した。
「おー! 面白そうだな! これを1日で考えたなんて、さすが海波! ……って、これってパクリなんだっけ? まぁ、クイズだ! 『1年生のとき、冬乃は何組だった?』。冬乃もねー、いいよねー」
追記……作者の資格試験が近いため、しばらく投稿を中止させていただきます。




