第330話 学園祭初日 〜11〜
「前回のクイズの答えは『二人』だ!」
「――あ、橋本くん!」
ゾンビのメイク――といっても、顔に絵の具とか付けてる程度だけど――してる宣伝係のところに行く。
「みんな来ないの……」
「いつからやってる?」
「私? 学園祭始まってからずっとだよ!」
俺よりも仕事してる……。
それは休んだほうがいい。
「じゃあしばらくは俺がやっとくから」
「うん、ありがとう! さっき風崎くんも来て、手伝ってもらってるんだけど……」
「大雅が?」
あいつも仕事してるのか……。
「それより、橋本くん、メイク大丈夫?」
「メイク……?」
「うん。宣伝係はゾンビメイクして学校中を歩き回らなきゃなんだけど……」
そうだ、メイクだ。
俺一人じゃそんなことできないし……。
「私の出番みたいだね」
後ろから聞こえる声。
間違いない、この声は笹川柚子さん――!
「――どうだ? 我の声、意外と似てただろ?」
と思ったら美月かい。
なんでお前がこんなところにいるんだよ。
「美月ちゃん……メイク、できるの?」
「本格的なやつはできぬが、顔に絵の具を適当に塗ればよいのだろう?」
「うん! それじゃ、お願いできる?」
「任せろ」
宣伝係のやつは嬉しそうにうなずいてから、首にかけてる看板を俺に渡してどこかに行った。
この看板、俺も首にかけなきゃいけないのか。
「それじゃ康輝、さっさとやっちゃうよ」
美月は俺の手を取って階段をのぼる。
俺たちの教室の前まで来た。
さっきよりも混んでる。
俺たちは教室の中に入って、スタッフルームってところに行く。
『ルーム』って言ってるけど、ただダンボールで壁をつくって、簡単な部屋を教室の中につくっただけ。
「じゃ、そこに座って」
部屋の中に一つだけパイプ椅子があるから、そこに座った。
美月はどこからか絵の具と筆を出す。
「……え、それ塗るの?」
「ああ、安全な絵の具だから心配するな!」
「ええ……」
少し嫌だったけど、クラスのためなら仕方ない。
俺は美月に、顔を塗られた。
冷たい感触がある。
「――よし、できた!」
美月が鏡を持ってくる。
その鏡を見てみるけど、暗くてなんも見えない。
「なんも見えないんだけど」
「……目悪いな……」
「いやそういう問題じゃなくて。暗くて見えないってこと」
「ああ、そういうこと」
とりあえず外に出る。
そこで鏡を見てみる。
そこにはどう考えても、顔に落書きした俺がいた。
「どうだ?」
「なんか……幼稚園児の落書きみたい」
「ひどい! 頑張ったんだぞ!」
「……でもありがとうな。それじゃ、行ってくる」
俺は看板を持ちながら廊下を進んだ。
「メイクね……。ってか、今回の学園祭、アクシデントばっかりだな。なんも楽しくないぞ。ではクイズだ! 『レギュラーメンバーで裏切り鬼ごっこの裏切り者は二人だったが、それは誰と誰?』。またやりたいな、あれ」




