第33話 大雅との勉強
前回のクイズの答えは『イケメン』だ! 確かに康輝はイケメンだな……抱きついている水麗が……」
「……」
「……」
俺は大雅と、俺の部屋の中で見つめ合う。
なんでこうなったかというと……
「大雅、今日空いてるか?」
放課後、俺は大雅に訊いた。
「ああ、めっちゃ暇。喧嘩の誘いか?」
「誘いではあるが喧嘩じゃない。お前、中間の成績どうだった?」
「ん? 壊滅的」
……ここから先はもう話さなくてもわかる……?
まぁ、俺が勉強しようって誘ったの。
そしたら意外と素直に大雅は頷いた。
「……まさかお前がここまでバカだとは……。二次方程式の公式くらい覚えただろ! 中学のときに!」
「……えー……でも五次方程式の解の公式は存在しないことは知ってるぞ! 小六のとき覚えた!」
大雅は少し胸を張って俺に言う。
……五次方程式……?
「なんでそんなすげぇこと知ってるのに二次方程式の解の公式はわからないんだよ! 俺でも知らなかったぞ!」
「……数学飽きたから違うのやろうぜ」
大雅はそう言い、数学の教科書をリュックの中に入れる。
「……じゃあ休憩な」
「よし! じゃあ俺お前と喧嘩……」
「しない!」
なんでこいつはこんな喧嘩バカなんだ……?
トーストくわえて走る水麗、喧嘩バカの大雅、生物マニアの美月……
俺の知り合いだいだい個性強いやつだな……
「……そろそろ時間だな」
大雅は部屋の壁にかかっている時計を見て言う。
その時計は六時を示していた。
「おう、帰れるか?」
「帰れるに決まってるだろ。じゃ、また明日な」
大雅はそう言い、俺の部屋から出る。
あー、疲れた……
何しよう……
……ん? めっちゃ視線感じる……
俺はふいに部屋の扉を見る。
それは少し開いている。
俺はそれを見てかなりビビった。
扉の隙間から誰かが覗いてる……
目しか見えない……
俺呪われるようなことした覚えねぇぞ!
俺がしばらくそこを見ていると、あることに気づく。
あの目……水麗か……?
「み、水麗! なんだよ!」
俺がそう言うと、扉がゆっくりと開く。
そこには目を細くした水麗が立っていた。
「お兄ちゃん……大雅と何してたの……?」
「べ、勉強だけど……」
「へー」
水麗は低い声で言う。
自意識過剰だと思うんだが、こいつ嫉妬してるのか……?
俺と大雅はずっとこの部屋で二人きりだったからかな……?
「安心しろ、水麗。特に何もしてねぇよ」
「……そっか。ごめん」
なんでこいつが謝る?
「ご飯、いつも通り七時でいい?」
「ああ、頼む。……俺も料理してみよっかな……?」
俺がつぶやくと、水麗は動きを止める。
「……どした?」
「お兄ちゃん……料理するの……?」
「え……まぁ、考えてる……」
すると水麗が目を輝かせて俺に近づき、俺の手を握る。
「じゃあ教えてあげるよ! 何から教える?」
「い、いや、まだいい……」
「大雅、二次方程式の公式がわからないとは……こんなことはどうでもいい。クイズだ。『水麗は学校での自己紹介で好きな食べ物は何と言った?』。だんだん難易度が上がってる気がするな……」




