第329話 学園祭初日 〜10〜
「前回のクイズの答えは『◯』だ!」
学園祭の最中だというのに、一つのクラスが全員呼び出された。
海波のクラスだ。
海波が本当にかわいそうだけど、海波は悪くない――多分――から変なことはされないと思う。
こういうのは主犯とかそういうやつが処罰されるから。
だから海波は今ここにいない。
「海波、本当に災難だったな……」
「せっかく憧れの人と会ったっていうのに……。家でたくさん愚痴言われるんだろうな……」
「あの、海波ちゃんのお兄さんでしたよね……?」
俺たちが海波の顔を想像してると、会話にひなたさんが入ってくる。
「海波ちゃんって、普段から私のことお家でお話させるんですか……?」
「もうしまくりです。うるさいくらい」
「あ、えっと……すみません……」
「あ、いや、謝ってほしいわけじゃなくて! むしろ感謝したいんです! あいつ、なんにも興味持たなかったから……。それを治してくれたんです」
へー、海波もいろいろあったんだな。
そういえばあんまり海波と向き合って話したことなかったかも。
「マジで最悪……」
後ろから急に声。
まるでゾンビみたいな声……って言っちゃうと失礼だから、元気がない声って言おう。
一瞬誰かわからなかったから振り向くけど、そこには海波。
「おお、おかえり」
「なんで連帯責任で怒られるの……」
半泣きの海波。
俺も海波の立場だったら半泣きしてるかも。
「まぁ、ドンマイドンマイだよ、海波ちゃん!」
「! ひなたさん……!」
海波の頭をポンポンしてるひなたさん。
それでまた半泣きになってる海波。
「反省文は回避できた?」
「私は一応……」
「ならいいじゃん! 気にしなくていいよ!」
確かに海波だけが怒られたわけじゃないし。
それにしてもバカなことするやついるなー。
あんなことしたら処罰が来るってことくらいわかるでしょ。
こういうやつがいるから校則とか厳しくなるのかな……?
うちの学校の校則はそこまで厳しくはないと思うけど。
「それじゃ、またみんなでどっか行こっか!」
うん、そうするか!
って思ってたら誰かからメールが来た。
クラスメール……?
よく見るとずっと前からメールが連発されてる。
水麗の『シフトの時間、確認して! ずっとやってる人いるから!』ってやつからどんどん来てるよ、メールが。
しかもいろんな人が絡んでる。
『そういえば宣伝係も全然集まってないんだけど? なにやってるの?』
『宣伝係、俺と加藤の二人しかいなくてマジで困ってるんだけど!』
『既読すらついてないじゃん、なにやってんの?』
『とにかく、協力できる人はお願い!』
うわー、みんなサボってるんだ。
最後の『宣伝係がいなくなる! 私も休憩したいし…誰かお願い!』って文で終わってる。
……これ、行ったほうがいいかな?
「ごめん、俺ちょっと用事があった!」
みんなにそう言ってから、俺は教室に向かった。
……学園祭、初めてじゃないんだから時間くらい守れよ……。
「海波……かわいそ。まぁ、我も去年は散々な目に遭ったのだ、仲間だな、海波。ではクイズだ! 『康輝たちは裏切り鬼ごっこというイベントをしたことがあるが、康輝たちがいつも関わってる中で裏切り者の人数は?』。あれ、意外と楽しかったな……」




