第324話 学園祭初日 〜5〜
「前回のクイズの答えは『◯』だ!」
「多分、お前がそう仕組んでくれたんだろ? 体育祭のあと」
大雅が話す。
でも全然集中できない。
だってさっきから『パンッ』て風船が割れる音がするから。
それに驚いてなんにも頭に入ってこない。
大雅は止まらないでそのまま進むから、俺も歩いてる。
「美月に別にそう言われたわけじゃないけど――」
「グアァァ!」
前から怖いお面を被った、お化け役の生徒がいきなり出てくる。
「わかるんだ、なんとなく。あいつは――」
「ギャァァァ! 喰ってやるゥゥ!」
「演技、意外と上手いけど」
大雅、やっぱ場所間違えてるぞ。
俺が話に集中できないし、なによりスタッフがかわいそう。
俺もお化け屋敷のお化け役、経験者だからわかる。
お客さんがビビってくれないときが一番悲しい。
俺は普通にビビってるけど。
「美月から色々なことを聞いたんだ」
「……あのさ、場所変えない?」
「? 入っちまったもんは出れないだろ」
「だから今すぐ出ようよ。ここで話すの間違えてるって」
「……ここが密告にはちょうどいいかなーって思ったんだけど」
「いや、『密告』じゃないだろ、別に。ってか、話に集中できないわ、ここじゃ」
「……え、なに、もしかしてお化け怖いの?」
うわ、腹立つな……。
お化けが怖くてなにが悪いんだよ。
ってか、怖いっていうよりビビるだけ!
このお化けたち急に来るからびっくりするの!
「大雅! お化けに失礼だから」
「はぁ? こいつらのどこがお化けなんだよ! 全然怖くねぇし!」
「俺だって怖くねぇよ! こんな低予算お化け屋敷なんて! ただ失礼だろ! 怖がらなきゃ!」
「低予算で出来もあんまよくないお化け屋敷で怖がりたくねぇわ!」
「確かに出来も悪い! 全然リアルじゃねぇし! さっき通ったところの壁なんて、きちんとペンキ塗れてなかった! 驚かせ方もワンパターンだし」
「まだ去年の俺たちのほうがましだったし」
「それは……そうだな。ここはきちんとクラスが団結してないっところが伝わってくるし」
「まるで磁石のN極とN極」
とりあえず大雅と口論っぽいことしたけど、なんか最後は意見が一致したからこのへんでやめとこう。
それと、さっきからおかしい。
全然お化けが出てこない。
もう出口なのに、驚かせてもこない。
出てからやっと、その理由がわかった。
俺たち、めちゃくちゃに言っちゃってたわ。
とりあえず受け付けにいる係りの人に二人で『すみませんでした』って言ってからそこから離れた。
『今は離れなきゃヤバい』って思ったから、早足で歩いてる。
……人間ってさ、周りが見えなくなったり、自分の言ってる意味がわからなくなるときってあるんだ。
「康輝……大雅……お主等な……。出禁くらってもおかしくないくらいだったぞ……。ではクイズだ! 『康輝が1年生だったとき、美月と同じクラスだった。◯か✕か』。……また◯✕か……」




