第321話 学園祭初日 〜2〜
「前回のクイズの答えは『石川ひなた』だ!」
やっと1時間経った。
つまり、俺たちの仕事はもう終わり。
――のはずなんだけど……。
「……来ないね……」
代わりに皆嘉が言う。
そう、次のシフトが来ない。
10分前にはいるルールになってるのに……。
仕方ないからこのまま仕事続けるしかない。
まぁ、今回は行きたいところとかないから別にいいけど。
前回みたいに友達が違うクラスとかないから。
「皆嘉、いつ終わりそう?」
気づいたら近くにいた海波が皆嘉に話しかけた。
海波の反応もなかなか面白かった。
半泣きしながら『皆嘉……これ高校生向けじゃないよ……』って訴えてた。
皆嘉は首を傾げて『俺もわかんない』って伝えてる。
海波は残念そうにどっか行った。
「海波、大丈夫?」
「さぁ? ってか、なんで訊いたんだろ、あんなこと」
「一緒にまわりたいって感じだったけど」
「そんなこと事前に言われてないし、一緒にまわる友達とかいるはず」
……あー、気づいてないな、皆嘉。
海波が暗に『皆嘉とまわりたい』って伝えてること。
なんでさっきからこんな呑気に会話できてるかっていうと、今さっきちょうど説明が終わったところだから。
今中に入ってる人が出てくるまでここで止まってる。
『もっと後ろにいる人にも説明しちゃおっかなー』って思ったけど、説明は早すぎても良くない気がしたからやめた。
「皆嘉、いいよ。あとは俺一人で」
「いや、それはさすがに――」
「いいよ、海波が待ってるから行ってあげな? さみしい思いさせたくないでしょ? 義理の兄として」
「康輝……」
「俺も義理の妹がいるからわかるよ。たまに不器用なときがあるもんだよな、義妹って。海波は自分の気持ちを上手く伝えるのが苦手なだけだと思うぞ? だから行ってやれ」
「……俺にとってはどっちも大切なんだよなー」
皆嘉は大きく伸びをしながら言う。
「海波は家族として、そして康輝は恩人として」
「俺が?」
「覚えてない? 去年の夏休み終わってからのこと」
……ああ、そういうことか。
そういえば皆嘉を助けたの、俺と美月――特に美月だけど――だったな。
「じゃあ恩人からの命令、海波と一緒にまわりなさい」
「それは……」
「恩人からの命令、聞けないの?」
「……ありがと」
皆嘉が微笑みながら椅子から立って、海波が行ったほうに向かった。
俺も微笑みながら手を振る。
……さ、カッコつけたはいいけど――
――早く来いよ、次のシフト。
俺もずっとここいるの嫌なんだけど。
「康輝、たまにカッコいいこと言うんだよなー……。ってか、我と大雅をもっと出せ! ……じゃあクイズ。『康輝は何人ナンパしたことある?』。……もうやだ……」
追記……8月11日からの約1週間、作者の予定が勉強勉強勉強勉強勉強なので、その間は活動を一時中断させていただきます。




