第317話 本番前のテスト 〜1〜
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
今日から学園祭だ。
去年と同じように二日間ある。
クラスの出し物の紹介文みたいなやつがみんなに配られたから、それを見てみた。
イラストと説明文が印刷されてて、どっちもクラスの生徒が書いたらしい。
イラストは前崎先生の似顔絵。
ビビるくらい似てる。
ちっちゃい子の夢とかに出てきて、悪夢になりそうな感じ。
でも肝心なのは説明の方だ。
そっちを読んでみる。
『地球に攻めてきた宇宙人、マエサーキを倒せ! 倒さないと人類はマエサーキ菌に感染して、マエサーキになってしまうぞ! 倒す方法はただ一つ! 政府から支給される特別な弾丸が装填された銃で撃つのみ! さぁ、キミたちはマエサーキを倒し、地球を救えるかな……?』
面白そうではある。
しかもなんか無駄にストーリー凝ってるし。
そういえば昨日、『受け付けの人は明日配る原稿をお客さんに言って』って言われたな。
俺受け付け係だから、なんか言わなきゃ。
それと、この出し物のキーワードが『ホラーアーケード』ってなってるし。
いつからジャンルがホラーになったっけ?
それに、アーケードってゲーセンにあるやつじゃないの? 詳しくないからなんも言えないけど。
さてと、俺は受け付け係だしいろいろ準備しとくか。
机にサーキュレーター、それからおもちゃの銃にタブレット。
タブレットは、出し物のストーリードラマみたいなのが流れるようになってる。
昨日撮影班が撮影したらしい。
俺はまだ見てないけど。
そういえばどんな銃なのかも見てないな。
原稿の紙をもらうついでに、銃のほうも受け取っとくか。
「――橋本!」
机を運んでたら、後ろからクラスのやつの声が聞こえる。
「今時間ある?」
「まぁ、机とか運ぶくらい」
「だったらさ、最後にテストしてくれないかな? リハーサルみたいな。俺たちも最後に練習しときたいんだ」
「あー、俺にお客さん役をやれって?」
「そういうこと。室井もやりたいって言ってるから、二人で頼む。ほら、カップリいっぱい来そうじゃん。それに近い形でやりたいんだ」
だったら俺じゃなくて大雅に頼めよ。
美月の隣にいにくいわ。
「じゃ、中で待ってる。もう準備できてるから、いつでも入ってきていいぜ」
そいつはそう言って教室の中に入っていった。
仕方ない、行きますか。
ちょうど美月が近くにいたから、そこに向かう。
「美月、中、確認するぞ」
「ああ、楽しみだな! 銃と弾は中に入ってすぐのところに置いといたから、そこで拾おう」
「……大雅とじゃなくていいのか?」
「あやつ、『宣伝してくる』って言ってどこかに消えてしまった」
あいつならやりそうだな。
まだお客さん一人も校舎にいないし、行かなくていいのに。
でも大雅が近くにいないならやりやすいな。
俺は美月を先頭にして、教室の中に入った。
「さぁ、我がクラスの出来はどんな感じかな? なんかおもちゃの銃を持つのは久しぶりだな……。ではクイズだ! 『康輝の母親の名前は明かされている。◯か✕か。また、◯の場合、その名前は?』。こういうの、テスト問題で結構嫌われるよね……」




