第315話 学園祭準備 〜4〜
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
初めて買い出しに行った感想。
最近のお菓子って高いね。
俺、あんまりそういうの買ったことなかったからわかんないけど、結構高かった。
小学生のときも買った記憶ないぞ、お菓子。
貧乏家庭だったもんな……。
「えへへ……いっぱい買えたね」
冬乃の言う通り、いっぱい買った。
3人とも両手に、お菓子がパンパンに入った袋を持ってる。
しかもこのレジ袋、大きめのサイズ。
10円かかったよ……。
環境的にもレジ袋を買うのはやめようかと思ったけど、エコバッグとかないからどうしようもなかった。
「あ、そういえば買うの忘れてた。水麗ちゃんは買った?」
「うん、ちゃんと5袋分買ったよ」
「さっすが水麗ちゃん! そういうとこ、しっかりしてるねー!」
「……なんとなくわかるけど一応訊くね。なに買ったの?」
「ステーキとチョコレートの青汁ミックスラムネ」
「だろうな」
しかも5袋も買ったんかい。
そんなに美味しいの?
でもさっき冬乃が『味の観点から店には置けない』って言ってたし、美味しくはないんだろうな。
人によって感じ方は違うけど。
「お兄ちゃんも食べる?」
「遠慮しとく」
「食わず嫌いはダメだよ? 私の料理は美味しそうに食べてくれるのに」
「それとはまた違う」
「じゃあ誰にあげる?」
「大雅……はやめとこう。先生にでも食べさせといたら?」
「あの人なんでも美味しそうに食べそうだもんね」
それはないだろ。
前崎先生がこれ食べたときの反応、気になるけど。
やっと学校に帰ってこれた。
教室までの階段がキツかったな……。
「みんなー! この冬乃ちゃんが差し入れ持ってきたよー! ……買ったのは水麗ちゃんだけど」
自分の手柄みたいに言うな。
しかも最後は小声で言いやがったし。
『差し入れ』って単語にみんなが騒ぎながら水麗と冬乃に寄ってくる。
水麗は袋から例のものを出す。
みんなに商品名を見られないように素早く袋を開ける。
中にある小袋は商品名とか書いてない。
みんなはそれを嬉しそうに受け取ってる。
「おーい、橋本はもらわなくていいのか?」
「俺はいいよ」
食いたくないし。
ただ、みんなの反応が気になるからそれを見たい。
だから敢えて言ってない。その商品名。
みんなはすぐ袋を開けて、早速ラムネを口に入れてる。
一粒ずつじゃなくて、一気に口に放り込んでる男子もいた。
……かわいそうに。
最初はみんな動きを止めただけだった。
『なんも起こんないかなー』って見てると、一部の生徒はダッシュで廊下に出て、一部の生徒は水筒の中の水をがぶ飲みしてる。
前者のやつはトイレで吐いてるんだろうな……。
……これさ、水麗犯罪だよね?
冬乃も共犯者だ。
「なにしてんだ?」
後ろから声が聞こえたから振り向くと、大雅と美月がいた。
「水麗にやられちまった」
「……水麗ちゃんが持ってるやつ、『ステーキとチョコレートの青汁ミックスラムネ』だよね?」
珍しく――はないか――地声で美月がつぶやく。
「知ってる?」
「罰ゲームで有名なやつだよね」
……おい、あの二人確信犯だぞ。
「あのお菓子ね……意外と好きな人多いらしいけどね……。ではクイズだ! 『作中で皆嘉が料理しているシーンがある。◯か✕か』。皆嘉ー!」




