第31話 皆に言いたい
『前回のクイズの答えは『①』だ! 我は生物とホラーが大好きだ!」
翌日、俺はいつもより少し早く登校した。
道を歩いていると、誰かに声をかけられた。
「康輝、お主いつもより早いな」
うん、いつも通り美月だ。
「おう、お前も早いな」
「我は先生に呼ばれてのう……お主は何をするつもりだ?」
「新坂のことを注意しよっかな……って」
俺がそう言った瞬間、美月が少し顔を引き締める。
「ん? どした?」
「康輝、やめた方がよい」
……昨日は新坂の味方してたのに、急になんで変わったんだ?
「だって、それこそ新坂に迷惑がかからないか? 注意してももっといじめが酷くなるだけだと思うぞ?」
「……そうか……でもなんか言わねぇと……」
「そこのところは我と新坂に任せろ。二学期の中間までになんとかする。約束だ」
美月はそう言って小指を立てる。
そしてそれを俺に向ける。
「……」
俺は黙ってその光景を見る。
……じゃあ、お前はそれまでの間、新坂に苦しめって言うのか……?
そう思うと……
「何をしている、早くしろ」
「……」
「……お主、『いじめられてた』な」
俺は目を大きくして美月を見る。
美月は表情を変えないで俺を見つめる。
「『新坂が苦しむ姿を見たくない』という顔をしておるな」
「……そうだよ……」
「今は我慢してくれ」
「……なんで……そんなこと簡単に言えるんだよ……!」
俺は下を見て言う。
昔のことを思い出しながら。
そう、あの時は急だった。
俺がいつも通り挨拶した。
しかし聞こえてきたのは舌打ち。
その次に聞こえたのは『なんで学校くるんだよ』。
俺は戸惑いつつ教室に入る。
しかし、俺の机が見当たらない。
「あ、来たんだ。もう二度と来ないかと思って机と椅子、なくしたよ」
そう言ったのは委員長。
俺の親友だ。
「え……なんで……? ……あ、俺の反応見たいの? どこかにカメラとか……」
「黙れ!」
委員長はそう叫び、俺の頬を殴る。
俺は吹っ飛び、床に手をつく。
俺の頬が赤くなる。
「え、待って、これ絶対『いいね』つく!」
「マジ!? 確かにバズりそう!」
「小説のネタになるな……。『今まで調子乗ってたやつが情けない顔する瞬間』っと……」
俺の姿をスマホで撮る者、それを見て楽しそうに笑う者、何やら熱心にメモ帳に何かを書いている者……
俺はただ皆を見ていた……
「いじめられる側はな……マジで自殺するんだぜ……!」
俺は気がついたとき、そう言っていた。
「……あ、悪ぃ……」
俺はようやく落ち着いてきた。
俺の目の前を通った人たちが全員俺を見て怯えていたからだ。
「……すまない、我も変なことを言った」
「いや……」
「……それと、何もするわけではない。我がずっと新坂の近くにいれば大丈夫だろ」
「まぁ……な……」
「それでは、早く行くぞ」
美月はそう言い、歩き始めた。
クソ……昔のこと思い出したら頭痛くなってきた……
「……康輝の過去……私は何も言ってはいけない立場なんだけど……。あ、ごめん、クイズクイズ! コホン、では問題だ! 『この我、室井美月は一年何組?』。これは簡単だろ〜! こう見えても結構人気なんだぞ、我は。我のことが好きな者は教えてくれ! ……でも、『室井美月嫌い』とかいうのはやめてほしい……。本気で泣くから……。それと、作者の都合で明日は投稿できないらしい。すまない」




