第306話 ハンバーガー早い食い 〜1〜
「前回のクイズの答えは『英語』だ!」
『ハンバーガー早食い』のルール。
『牛乳、コーラ一気飲み』とほぼ同じ。
200メートル走って、そこでハンバーガー食べて、次は100メートル走る。
それをリレーする。
本当に思うんだけどさ、走る意味ないよね?
しかもこの前保険の授業で『一気飲みや早食いはあまりよくない』って言われたぞ。
気づいたらもう始まってたみたいで、3つの団が必死にハンバーガー食べてる。
みんな苦しそう。
これ、下手したら『牛乳、コーラ一気飲み』より苦しいかも。
だって弁当食べたばっかだよ?
「おやおや? 『俺、食べれるかなー?』って顔してるじゃん」
後ろからなんか聞こえる。
誰の声かわかったけど、一応振り向く。
俺の真後ろに冬乃がいた。
「冬乃じゃん」
「あれ? 今まで私の存在気づかなかった?」
「うん、全然気づかなかった」
「私の存在感そんなに薄い!?」
いや、冬乃の存在感はとても濃い。
俺たちの中で一番目立つと思う。
「それより、大変だよねー。ハンバーガーなんて普段早食いしないよー」
「俺はめちゃくちゃ練習したけどな」
「あ、そうだったね、水麗ちゃんからそう聞いた」
「そっちは自身ある?」
「んーとね、精神的に自身ない」
どういう意味?
ハンバーガー食べるのに精神いる?
「それがさ、うちの親が来ちゃってるんだよね」
「あー、見られてたらできない的な?」
「いや、別に見られるのは全然大丈夫なんだけどね。ほら、うちラーメンとか中華扱ってる飲食店じゃん。だからお父さんとか中華大好きでね……。目の前でピザとかハンバーガー食べちゃうと……」
あー、なるほどね。
それは大変だな。
「自慢じゃないけど、うちテレビとかも結構出たことあるから、お父さん誇りに思っちゃってるみたいで……」
「まぁ、いいことだと思うよ?」
「そうかな……? そういえば、康輝くんのお父さんもいたよ?」
……は?
いや、俺会ってないんだけど。
観客席見ても父さんらしき人はいなかったよ?
「私も最初は気づかなかったんだ。なんかね、平安時代の貴族みたいなコスプレしてた」
なにしてんだよ。
父さん、働きすぎて頭おかしくなっちゃったかな?
どうしよう、『あとで父さんのとこ行こ』って思ったけど、その気持ち消えた。
知り合いと思われたくないから話せない。
「……あ、そろそろ康輝くんだよ! 頑張って!」
冬乃がそう言うから前を見てみる。
俺の一つ前の走者が今ハンバーガー食べてるところだった。
正直、やりたくない。
「康輝、『やりたくない』なんて言うな。ハンバーガー食べれるんだぞ? ……うん、ではクイズだ! 『水麗は学校に問題集を買ったことがある。◯か✕か』。学校帰りに問題集なんて、勉強熱心だな」




