第304話 午前の部、終了
「前回のクイズの答えは『✕』だ!」
とりあえず午前の部は終わった。
これで前半戦終わり。
「おかえりー、お主等早かったな」
本部に戻ると、美月が呑気に仕出し弁当を食べてた。
「見ていて面白かったぞ」
「ただ俺が引きずられただけだけどな」
「ケガは?」
「ない」
「康輝ー、これお前の弁当なー」
前崎先生が美月が今食べてるのと同じ弁当と箸を持ってきた。
俺はお礼を言ってそれを受け取り、美月の隣に座る。
今年から弁当が仕出し弁当になった。
「じゃ、いただきます」
「想像より美味いぞ」
「期待しときます」
そう言って早速口に運ぶ。
うん、美味い。
……でも、水麗のつくった料理を食べてきちゃったからな……。
「それより、皆青春してるなー」
「牛乳とコーラ一気飲みしたり、中身がわからないパンを手錠掛けながら食べるのが青春?」
「そんなわけないであろう。女子が男子に『写真撮ろ?』とか言ってツーショットしたり、ハチマキかわいく巻いて男子にアピールしたり」
確かに、女子のハチマキの巻き方が男子と違う。
猫耳みたいにしたりしてる。
でも美月は普通に巻いてる。
「お前はやんないのか? そういうこと」
「そう見られたい人が近くにいないからな」
あー、大雅のことかな?
「でも、女子って自分をかわいく見せたいんじゃないの? 別に気になる人がそこにいなくても、かわいい行動したりしてるでしょ?」
「全部の女子がそういうわけではないのだ」
話に夢中になりすぎて、あんまり弁当を味わえてない。
でも今は話に集中したい。
意外と面白い。
「……じゃ、午後は俺一人でやる」
「は? なにを言って――」
「せめて午後くらいは隣にいろよ、大雅の」
『大雅』って名前を出すとさすがの美月も驚いたみたいで、目を大きくして俺を見てる。
「な、なんで大雅が――!」
「大丈夫、誰にも言うつもりはない」
「…………」
「ハチマキかわいく巻いて、ツーショット撮れ。午後は俺がやるから、放送。あいつ、基本的に俺がいないときは一人だから行きやすいと思うぞ?」
「……気遣いありがと。でも、正直まだ勇気出ないんだよね」
美月が地声になる。
ここからはかなり本心みたいだ。
「大雅もさ、鈍感だから、私がアプローチしても気づかないし。きっと私のことなんて『同じ部活のマネージャー』としか思ってないよ」
「それはないと思うぞ?」
箸を止めて言う。
美月も箸を止めた。
大雅のさっきの言葉。
『このこと、美月には言うなよ』。
あいつも、美月のことをなんかしら思ってるに違いない。
「行ってみろ、きっと上手く行く」
「……そっか、ありがと!」
美月は笑顔になってそう言った。
「……今回に関してはノーコメントで。ではクイズだ! 『水麗は運動部と文化部、どっち?』。……なんとなくわかるよね、『クイズのネタなくなったんだな』って」




