第303話 笑わせ大会 〜3〜
「前回のクイズの答えは『まえさきたみと』だ!」
審査員のところまで来た。
みんな先生だ。
うわ、いつも笑わない先生だ……。
俺、この人たちの笑顔見たことあったっけ?
「康輝、笑わせるぞ」
「あ、ああ」
「……で、どうやって笑わせる?」
「考えてなかったのかよ」
「難しいこと考えんのは嫌い」
確かに、審査員を笑わせるのは難しい。
しかも面子的に。
どうすれば笑ってくれるかな?
「! 康輝、思いついた! ダジャレ!」
「お、マジか! 頼む!」
「ああ、とっておきだ」
お、期待させてくれるじゃん。
大雅のダジャレ、聞くの初めてだな。
楽しみだな。
「……おばちゃんが池に落っこった、お、バッチャーン」
……え、つまんな。
ってか、さむ。
もちろん、審査員は誰も笑ってない。
「あれ? おかしいな」
「いや、今のは誰も笑わないって」
「はぁ? 俺のとっておきだぞ」
「あんなつまんないの初めて聞いたぞ。ならまだ『布団が吹っ飛んだ』のほうが面白い」
「いやいや、俺のやつめっちゃ面白いって!」
いや、全然面白くないって。
むしろつまんない。
どうしよう、大雅じゃ誰も笑わない。
ここは俺が本気出すしか……。
……? あれ?
一人だけ笑ってる。
このやり取りで笑ったの?
これで笑う人いるんだ……。
でも、あと二人。
なら、俺も面白いこと言ってやろう。
「大雅、俺昨日区長と会ったんだよね」
「へー……」
「でさ、その区長、なんでも『ですます』で済ますんだよ」
「……だから?」
「『ですます口調で済ます区長』」
「……お前、水麗に泣かれるぞ」
いや、面白いだろ、『ですます口調で済ます区長』。
水麗とかだったら30分くらい笑うぞ。
そう思って審査員を見るけど、全然笑ってない。
「全然笑ってねぇじゃん」
「あれ? おかしいな……」
「お前、勉強できるくせに笑わせることはできないんだな。勉強が全てじゃないんだぞ」
「そういうのは勉強ができるやつが言うから説得力があって、勉強できないやつが言ってもなんの説得力もねぇんだよ」
「……あー、もういい」
大雅はそう言って、数歩前に出る。
もちろん、紐があるから俺も前に出た。
「康輝、審査員を見てろ」
? 急にどうした?
疑問に思いつつも、俺は言われた通り審査員を見つめた。
すると、急に審査員全員が爆笑した。
「よし、クリア! 行くぞ!」
大雅、お前か!
ナイスすぎる!
「どうやって笑わせたんだ?」
二人三脚しながら大雅にそう訊く。
今度はちゃんと歩いてる。
「変顔した」
「……は?」
「変顔だよ」
え、審査員大雅の変顔で笑ったの?
どんだけヤバいんだよ、大雅の変顔。
それと大雅、お前一応顔整ってて、イケメンなんだからちょっと台無しだぞ。
ま、この競技で勝てればいっか。
「……え、大雅って変顔するの? 見たことないんだが。……今度見てみるか。ではクイズだ! 『水麗と海波は同じ部活である。◯か✕か』。久しぶりに出てきたな、海波」




